ホームインスペクション(住宅診断)の説明の義務化と課題

最近、住宅業界において、「中古住宅の売買に際してホームインスペクション(住宅診断)が義務化される」として話題になっています。

多少、誤解されているようですが、義務化されるのは、利用ではなく確認です。ホームインスペクション(住宅診断を利用するかどうかを売主や買主に不動産会社(仲介業者)が確認する作業が義務化されるのです。

ホームインスペクションの義務化

もちろん、確認した結果、利用しないという判断もありうるのです。

とはいえ、今まで多くの不動産会社が中古住宅の売買に際して買主がホームインスペクション(住宅診断)を利用しようとしても、購入中止を恐れて嫌がる傾向にあったことを思えば、不動産会社の方から確認しなければならなくなることは大きな進歩です。

不動産会社によっては、「普通は利用しませんけどね」などと利用しない方向に誘導を試みる会社や営業マンもいると予想されますが、今よりは利用が増えることでしょう。

ただ、同時に非常に大きな課題が残りました。それは、ホームインスペクション(住宅診断)の第三者性がほとんど考えられていないという点です。

不動産会社が売主や買主にホームインスペクション(住宅診断)の利用有無を確認し、利用したいとの意思表示を受けた場合、多くの不動産会社は自社や自社が提携するホームインスペクション業者を紹介・斡旋しようとすることでしょう。

不動産会社から顧客紹介を受けて営業活動を行うことを前提としたホームインスペクション業者の場合、不動産会社からの紹介がなくなれば事業に息詰まる立場であるため、不動産会社に頭があがらない状況となるのは容易に想像がつきます。

不動産会社は物件が売れなければ仲介手数料をもらえません(成功報酬のため)。売りたい不動産会社から仕事をもらうホームインスペクション会社だけに、買主のための診断やアドバイスができるか今から疑問視されています。

日本経済新聞の6/6付の記事でも「改正法には心配な点もある。仲介業者が診断をする建築士などをあっせんできるようにした点だ。紹介してくれた業者に配慮して診断がお手盛りになっては困る。改正法を運用するうえでは診断する建築士の中立性を担保できる仕組みにすべきだ。」と書かれています。

中古住宅を購入する買主としては、不動産会社の紹介や斡旋ではなく、自分自身でホームインスペクション(住宅診断)を行う会社を探して依頼するよう心がけましょう。せっかくのホームインスペクション(住宅診断)を無駄にしないために重要なことです。

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