3月末に多い未完成住宅の引渡しには要注意

日本では、2月か3月に完成する新築住宅が非常に多い。

理由の1つは、新年度から新居へ引っ越すことは買主にとって都合がよいという人が多いからです。お子さんの転校、進学のタイミングに合わせることが家族にとって好都合なのもうなずけます。3月中に引渡しを受ければ、春休みの間に引越しできますね。

未完成住宅の引渡し

一方で売主側にも大事な理由があります。多くの企業が3月を決算月にしているため、3月末までに完成した住宅を引渡せるかどうかが、その年度の決算に大きく影響するのです。経営計画にあうように、もしくは各営業マンの年度成績の調整のためにといった売主都合が垣間見られる時期です。

売主にとっても買主にとっても都合がよいのであれば、それに対して何も言うことはないのですが、そうとも言っておれない問題が生じる新築住宅の取引があります。それは、未完成の住宅を売主から買主へ引き渡してしまうという問題です。

新築住宅を買えば、その建物が完成してから代金を支払い、それと同時に引渡しを受けるのが常識です。完成していないものに先に代金を支払うことは通常ではありません。

しかし、決算の関係で3月中に売上計上するためには、住宅を引渡すことが求められるため、まだ完成していない住宅を強引に買主へ引渡そうとすることが少なくないのです。3月下旬になれば、必ずこういった住宅への竣工検査の立会い(内覧会立会い・同行サービス)のお問合せが増えます。これを毎年のように繰り返しているのが、この住宅業界の現状です。

未完成のまま引渡しを受けるという問題だけではなく、完成させて引渡しするために突貫工事で雑な作業が増えて、施工ミスを起こしてしまう現場もあります。13年以上の間、新築住宅の完成・引渡し前のホームインスペクションである内覧会立会い・同行サービスを提供させて頂いてきましたが、間違いなく、3月の完成物件の指摘項目の数は他の月よりも多くなります。

もちろん、個々の物件によって差異があるため、丁寧に施工されている住宅も多いことは言うまでもありません。ただ、3月完成物件を購入する場合、引渡し前の買主(または施主)による竣工検査(ホームインスペクション)は丁寧に時間をかけて実行する考えでいた方がよいでしょう。

 

執筆:荒井康矩(ホームインスペクションのアネスト