新築住宅の引渡しの流れと注意点(建売住宅編)

新築住宅の引渡しの流れと注意点(建売住宅編)

住宅の売買では引渡しの前後でトラブルに合う、またはトラブルが表面化することはよくあることです。失敗しない住宅購入のためにも引渡しの前後のことを理解し、注意点を把握しておくことは重要です。ここでは、新築一戸建て住宅を購入した人向けに、売買契約から引渡し、引越しまでの流れや大事な注意点を説明します。

対象は、新築一戸建てのなかでも建売住宅(分譲住宅)を購入した人です。注文建築で家を建てた方向けの記事は改めて書きますね。

新築建売住宅の引渡しの流れ

新築の建売住宅(分譲住宅)を購入したときの引渡し前後の取引の流れと、引渡しの当日に行うことを以下の順で説明します。これにより、引渡しの流れを理解できるでしょう。

引渡し前後の流れと当日に行うこと

  1. 売買契約から引渡し、引越しまでの全体の流れ
  2. 新築建売住宅の引渡し日のこと

1.売買契約から引渡し、引越しまでの全体の流れ

購入する物件を決めて売主と価格交渉なども済ませ、売買契約を交わすところから、その物件に引っ越して入居するまでの流れは以下のようになります。

売買契約を交わす

必ず、売買契約の前に重要事項説明を受けます。このとき、宅地建物取引士から資格証やその会社の従業員である証明書を提示してもらったうえで、この説明を受けます。宅地建物取引士の資格を持たないものが説明して、買主に署名・押印を求めることはできません。

重要事項説明と売買契約を行う場所は不動産会社のオフィス(店舗)かこれに準ずる場所です。それ以外、たとえば買主の自宅で売買契約を交わした場合には、原則としてクーリングオフすることが可能です。

売買契約のときに手付金を支払います。この手付金は最終決済(引渡しと同日)のときに売買代金の残金に充当されます。

住宅ローン(融資)を申し込む

借入希望の金融機関に住宅ローン(融資)の申込書とその必要書類(収入証明書など)を提出します。申込書は買主が自分で金融機関から入手するか、金融機関へ出向いて記載しますが、不動産会社の提携ローンなどの場合には不動産会社が申込書を用意することもあります。

申し込みから審査結果がわかるまでに、1週間~2週間程度かかります。

引渡し日の調整と必要書類等の準備

引渡し日は売買契約書において、〇月〇日までという期限を決めていることが多いです。そして、具体的な日取りは住宅ローンの審査にパスしてから調整することが多いです。売買契約書で定めた期限までで売主と買主の予定を調整して確定させます。

引渡しに必要な書類などを準備しておきます。必要な書類などは不動産会社から教えてもらえますが、できれば売買契約の時には必要なものを聞いておいた方が無難です。

購入物件の完成検査(竣工検査)

引渡しより前に、契約した物件の完成時の状況を買主が検査します。施工品質をチェックし、図面通りに建てられているかもチェックします。この完成検査を内覧会や確認会と呼ぶ不動産会社も多いです。

一般的には売主・建築会社・買主が同時に立ち会って行います。仲介した不動産会社がある場合は、その不動産会社も立ち会います。しかし、一部の売主は立ち会わずに建築会社へ任せてしまっていることもあります。

引渡しと残金の決済

引渡し日に、契約済みの建売住宅のカギが売主から買主へ引き渡されます。また、これと同時に売買代金の残金全額を買主から売主へ支払います。もちろん、住宅ローン(融資)による資金も残金の一部として売主へ支払います。

引越し(入居)

買主の都合の良い日に引越しします。

2.新築建売住宅の引渡し日のこと

次に引渡し当日に行われることを説明します。初めて家を買う人にとって、引渡しってそもそも何をするの?と心配する人は多いです。知らないのは当然のことですから、ここで覚えておけば大丈夫です。

引渡しを行う場所

ほとんどの売買において、銀行で引渡しを行います。普段、銀行へ行ったときに目にする窓口ではなく、会議室のような個室で行います。建売住宅の場合は、買主が住宅ローンを利用する銀行で行うことが多いですが、売主(不動産会社)がその不動産を抵当に入れている場合には、不動産会社が事業資金の融資を受けている銀行で行うこともあります。

引渡しに立ち会う人々

当然のことながら、買主と売主は必ず立ち会います。そして、その場所を提供している銀行の担当者も立ち会いますが、書類手続きなどで席を立つことが多いです。引渡しの時に重要な役目を果たす司法書士も立ち会います。不動産仲介業者が取引を媒介している場合は、その会社も立ち会います。

引渡し時に行う作業

買主と売主が持参した書類を司法書士が確認し、その司法書士が登記申請書を完成させます。司法書士は事前に書類を作成してきていますので、引渡しの場ではそれほどの時間を要しません。売主と買主が委任状に署名・押印しますが、事前に行っておくこともあります。

銀行から融資金が用意され、買主が用意しておいた残金とともに売主へ支払います。買主が用意する残金はその銀行の口座へ準備しておき、融資金と一緒に売主へ振り込みする流れになりますので、買主が融資金を現金で目にすることはほとんどありません。

これらの作業完了と同時に売主から買主へ鍵が手渡され、これにより買主がその新築住宅の所有者(オーナー)ということになります(所有権の移転)。

意外と感じるほどあっけなく終わるでしょう。

新築建売住宅の引渡し前の6つの注意点

新築建売住宅の引渡し前の6つの注意点

引渡しの流れや引渡し当日にすることを理解した後は、引渡し前後の注意点を学びましょう。住宅トラブルを防ぐためにも、理解しておきたい注意点として下の6点をあげておきます。

建売の引渡し前の注意点

  • 住宅購入資金の準備・確認
  • 引渡しに必要なものの準備
  • スケジュール調整
  • 引渡し前の完成検査(竣工検査)
  • 補修工事後の再検査(再確認)
  • 事遅延による引渡日の延期(未完成物件を購入した場合)

それでは、上の6点について説明していきます。

1.住宅購入資金の準備・確認

住宅購入資金とは、売買代金や必要な諸費用に充てる金銭のことで、自己資金と住宅ローンで構成されます。親から住宅購入のために贈与を受ける場合は、それも自己資金だと考えてください。

売買契約を交わす直前や引渡し(=決済)が近づけば、この住宅購入資金が資金計画の範囲に収まっているか再点検してください。諸費用が思ったよりもかさむ場合や外構工事が別途になっている場合などには、知らないうちに資金計画が変わってしまい、購入資金を準備できないということもあります。

全体的にゆとりを見ておくことが大事なのですが、対策としては住宅ローンの借入希望額は少し多めにしておくとよいでしょう。

不動産会社から提示される諸費用の概算金額ですが、普通は多めに見積もっています。その理由は買主の資金がショートしたら関係者全員が困るからです。だからといって、ギリギリの金額で計画を立てずにゆとりを見た方がよいです。引渡し後の引っ越し費用や家具・インテリアの購入資金も必要ですから、よく検討しましょう。

2.引渡しに必要なものの準備

引渡しに必要なものは、不動産会社から説明を受けられます。売買契約のときなどによく聞いておくとよいでしょう。準備するもののなかには、引渡し当日に持参するものに限らず事前に不動産会社や司法書士事務所へ送付しておくものもありますから、準備すべき期日も合わせて確認しておいてください。

一般的には、住民票・印鑑証明書・身分証明書が必要になります。引渡し当日にはこれらとともに実印も持参します。

3.スケジュール調整

スケジュールの調整とは、「1-1.売買契約から引渡し、引越しまでの全体の流」で挙げたことの日程を確認して、適宜調整することです。特に未完成の新築住宅を契約した人にとっては非常に重要です。工事が遅れて引渡し日が遅延することがあれば、引越し業者の段取りにも影響しますね。完成日や引渡し日の確認は早めにしておきましょう。

4.引渡し前の完成検査(竣工検査)

引渡し前に行う非常に重要なイベントです。契約した建売住宅の完成時の状況を買主目線でチェックし、不具合(施工不良)などがあれば、売主に指摘して補修してもらいます。売主が本来ならば補修すべきことでも、黙っていることもありますから、注意して丁寧に確認しましょう。

買主が指摘したことに対して、「それは許容範囲だ」などと誤魔化そうとする売主や建築会社の担当者も多いため、できれば第三者の建築士に依頼して立ち会ってもらうことを推奨します。第三者の新築住宅のホームインスペクション(住宅診断)を利用するということですね。

5.補修工事後の再検査(再確認)

完成検査(竣工検査)のときに指摘したことを建築会社が補修しますが、その補修後に買主は補修後の仕上がりを確認することも忘れてないようにしましょう。補修のために立ち入った業者が、傷や汚れをつけてしまうこともあるので、そういったものが無いかも確認した方が良いです。

この補修工事後の再検査のときは、第三者のホームインスペクション(住宅診断)は必要ないことが一般的です。指摘箇所の補修後の確認は場所も状況もわかっているため、買主自身が見ても確認できることが多いからです。よほど、施工品質が悪く、重大な施工ミスがいくつか見つかった場合には再度依頼してもよいでしょう。

6.工事遅延による引渡日の延期(未完成物件を購入した場合)

引渡しに際して最も注意しておきたいのは、工事遅延による影響です。完成物件を購入するのであれば、これについては心配する必要はないですが、今の建売住宅は未完成のときに売買契約を交わすことが多いため、該当する人は多いはずです。

工事が遅延した場合、売主はなんとか引渡し日に間に合わせようとして、施工する下請け業者を急かすことになります。強引に引渡し日に間に合わせた結果、施工ミスが続出するケースは全国的に多発しており、このことが欠陥住宅問題を減らない要因にもなっています。

しかも、買主には遅延していることが知らされず、無理に引渡し日に間に合わせていることがよくあるため、引渡し前の完成検査や引渡し後に、施工の粗さに気づいて驚く人も多いです。

買主としては、引渡しが多少は遅れても大丈夫なように全体のスケジュールを検討しておき、突貫工事をされるようであれば、引渡し日を柔軟に対応する姿勢を示した方が得策です。

更に大きな問題なのは、未完成にも関わらず強引に買主へ引き渡そうとする建売業者の存在です。ダメな零細企業がやりそうなことだと思うかもしれませんが、むしろ企業規模がそこそこ大きな会社の方がこのようなことをしようとします。

会社の毎月の目標、期ごとの目標があり、店舗や個人の成績の問題もあることから、未完成にも関わらず強引に買主へ住宅を引き渡してしまって、残金の支払いを求めようとします。このような建売業者に対しては、毅然とノーだと意思表示することが大切です。

このような状況下で、売主と関係が悪くなるのは心配だという人がいますが、悪質な売主の行為に対して毅然と言えない方がよほど危ない関係になっていますから、しっかり対応しなければなりません。このようなケースでは、引渡し後の残工事の施工品質が悪くて後悔することも非常に多いです。