ホームインスペクション(住宅診断)の義務化

2003年より住宅診断(ホームインスペクション)や住宅購入相談などの第三者サポートサービスを行ってきましたが、2015年4月にそんな私にとって非常に興味深いニュースを日本経済新聞が報じました。

株式会社アネストブレーントラストを立ち上げた当時(創業時の名称はオフィス・アネスト)、住宅診断やホームインスペクションといった言葉を聞いたことのある人は非常に少なかったと思います。私自身もホームインスペクションという言葉は使用していませんでした。

小屋裏のインスペクション

しかし、2015年4月の日本経済新聞で一面に「中古住宅の診断義務化」というニュースが出ました。実際に今すぐに義務化されるわけではなく、今後も不透明な状況ではありますが、このようなニュースが日経新聞の1面に出ること自体に驚きと感慨深さのような気持ちがこみ上げてきたものです。

ほとんど誰も知らなかったものが、社会に認められつつあるという事実。この10数年の間に、実際に住宅診断(ホームインスペクション)を利用される方は増え続けており、当時はほんの数社しかなかったホームインスペクション会社も今でも何社あるかわからないぐらいです(玉石混交が新たな問題ですが)。

ホームインスペクション(住宅診断)の義務化というニュースには、私以外にも何年も前から関わってきたものにとってはビッグニュースであったろうと考えます。

ただ、このニュースを聞いて喜びだけではなく、同時に複雑な気持ちもありました。いや、もしかするとこの複雑な気持ちの方が先に出ていたようにすら感じます。

それは、適切にホームインスペクションが普及していくことに、この義務化がプラスなのか、マイナスなのかといって点です。私が考える適切なホームインスペクションの普及とは、住宅を買う人にとって本当の意味で役立つ利用の仕方が普及することです。ただ単に利用されさえすれば、何でもいいというわけではありません。

今、住宅・不動産業界においては、「中古住宅の流通量を増やすべきだ」という考えが広まっています。国土交通省の打ち出す制度にもこのことは表れています。中古住宅がもっと多く売買されるようにするためには、建物への安心感が必要だという考えからホームインスペクションの普及が必要だという認識をもつ人や会社も多いです。

私自身もその通りだと考えますし、そうなることを願っており、そのためにアネストにおいて日々、努力しているところです。

心配していることは、義務化によってホームインスペクションの活用の仕方がゆがんでくるのではないかということです。不動産会社の都合にあわせたホームインスペクションになってしまい、住宅を買う人にとって役立つものではなくなるのではないかという不安です。

今までは、多くのホームインスペクションが買主の主導で依頼して利用されてきました(一部では不動産会社が売るために利用を促すケースもあります)。このときの不動産会社は、建物を診断することによって問題が発覚して購入中止になることを怖れてホームインスペクションを利用しない方がよいと考えることが多いです(全てではありません)。

しかし、義務化されたとなると不動産会社もホームインスペクションの利用を買主に説明せねばなりません。そうなったときの不動産会社は、自社の望むホームインスペクションの利用を買主に奨めたいことでしょう。この続きは「ホームインスペクションに対する不動産会社と買主の本音の違い」です。

執筆 : 荒井康矩