築40年の中古木造住宅のホームインスペクション(住宅診断)の事例 No8

今回は築40年を経過した木造の中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)を行ったときの事例です。築40年ともなれば、建物の劣化が相当に進んでいるものです。古い中古物件の購入を検討される人のなかには、これだけの年数が経過しているのだから、古くても仕方ないしインスペクションしても意味がないと考える方もいます。

しかし、同じ築年数の住宅であっても、個々に建物の状態は異なるものであり、築40年の建物が40年相当程度の場合もあれば築20年~30年程度のものと変わらないものもあります。そして、逆にもうボロボロでとても居住に堪えないものもあります。

つまり、築年数に関係なく、ホームインスペクション(住宅診断)により建物の状態を把握することは役立ちます。また、インスペクションで早急に補修すべきことがわかれば、補修対応することで寿命を延ばすこともできますね。

床下の基礎と換気口

床下の写真です。古い住宅では、床下に検査担当者が進入していくスペースが十分にないことも少なくないですが、今回の物件では無事に進入できました。これも1つの安心材料になりますね。

築40年を経過しているにも関わらず、基礎コンクリートの表面にひび割れが見られません。基礎は建物外部からも確認できますが、床下からの確認ができる場合はぜひお奨めです。

特に換気口の周囲にはひび割れ(クラック)が生じやすいものですが、今回の住宅ではそれもなくとても築40年とは思えない状態を保っていました。これは、地盤がよい可能性や新築時の基礎の施工品質が良かった可能性が考えられます。こういった診断結果は、買主にとっても売主にとっても嬉しいことですね。

また、床下では、土台や大引きなどの構造的な重要な部位も確認できますが、これらの部位にも腐朽や大きな割れもなく床下で移動して目視できた範囲では状態がよいものでした。

床下の廃材

こちらも床下の写真ですが、廃材や残土が残されていました。おそらく新築当時のものであろうと推測されます。通気の妨げになりうることと廃材がシロアリの温床になってしまうリスクもあるため、早急に取り除いた方がよいとアドバイスしています。

床下では湿っぽさが感じられましたが、一部で、もともとあった基礎の換気口を覆い隠すように増築時の基礎が作られている個所があったため、これが通気に少し問題が生じさせたと思われました。シロアリ被害が生じるリスクを感じるため、前述の廃材を取り除くだけではなく、早期の防蟻処理やコンクリート土間への変更も検討する必要があります。

ちなみに、床下には断熱材が設置されておりませんが、この時代(1980年以前)の住宅では断熱材が設置されていないことは多いです。つまり、築年数から考慮すればやむを得ないことですが、断熱材がないということは、夏は非常に暑く、冬は非常に寒くなり、冷暖房の効率も非常に悪くなってしまいます。光熱費や日々の暮らしの快適性という点から考慮しても、購入後のリフォームでは断熱材の設置は優先的に考えたいところです。

雨漏り痕

室内の壁と天井に雨漏り痕らしき水染みが見られました。不動産業者の説明によれば、現在は雨漏りが止まっているとのことであり、染みも古いもののように見えます。しかし、該当箇所を解体して内部を確認しているわけではないため、確実に雨漏りが止まっていることを確認できていません。

屋根裏の内部を確認したところでは、雨漏り痕はありませんでした。念のため、リフォーム時には水染み箇所の内部を点検しておきたいところです。

また、写真はありませんが、この住宅ではバルコニーにも注意が必要でした。鉄骨の柱で支えるタイプのバルコニーなのですが、各所で劣化が進んでいました。バルコニー手すりに錆があり、柱にも錆が多くありました。目視で腐食が進行している様子も見られるため、早めの補修が必要です。

建物本体の構造と分離した形のバルコニーである場合、その耐久性を軽視する人もいますが、使用中に倒壊すれば怪我をしますし、隣地との距離関係によっては何らかの迷惑をかけて損害賠償問題に発展する可能性もあります。注意したいところですね。

今回の事例では、床下を中心にレポートしていますが、実際の現場では屋根裏や建物外部、室内なども細かくインスペクションしています。基礎や土台などの基本構造部分において、築40年とは思えないほど状態がよいことがわかったので、その他の補修すべき箇所をきちんと補修していけば、まだまだ居住していけるものでした。

こういった診断結果は、築年数が古い住宅の購入を検討する人にとっては大変大事なものですね。

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