中古住宅の基礎のひび割れ(クラック)を判断する方法

購入を検討している中古住宅を見学したとき、基礎にひび割れ(クラック)があるのを見つけた場合、買ってもよいかどうかどのように判断すべきでしょうか。間取りや価格、立地などの条件が希望と一致しており、購入したいと考えている物件で、基礎のひび割れ(クラック)だけが心配な場合として考えてみましょう。

基礎のひび割れ(クラック)

ひび割れ(クラック)というのは1つの症状です。私はたとえとして、「人が風邪をひけば熱が出たり、咳が出たりしますよね。それと同じような症状ですよ」と説明しています。ひび割れ(クラック)と言ってもいろいろで、建物にほとんど影響のない程度のものから、構造的な瑕疵などの重大な問題を抱えるものまで様々なケースがあります。

咳が出た場合でも、風邪ともいえないものから、風邪どころかインフルエンザ、いやもっと重大な病のようなものもあるということです。

買いたい中古住宅で基礎にひび割れ(クラック)を見つけたときの話に戻しましょう。

このとき、ひび割れ(クラック)が生じた原因が何であるかを探る必要があります。

基礎の表面はモルタル仕上げであることが多いですが、この仕上げ部分は割と簡単にひび割れ(クラック)が生じます。これだけであれば、騒ぐほどのものではなく、ヘアークラックなどと呼ばれるものです。

このひび割れ(クラック)が表面のモルタルだけのものであるか、または基礎コンクリートにまで達するものであるかは1つの判断材料となるものです。

基礎コンクリートは構造部分ですから、これにひび割れがあるならば構造的な劣化、ダメージというものがあると言えます。構造クラックと呼ばれます。その基礎が本来ならば有していたはずの構造耐力がない可能性が高まりますから、できる限り早めの対処(補修)が求められます。

構造クラックがいくつもあるような住宅の場合は、それだけ問題が大きいと言えます。そして、構造クラックにも程度差があると言えます。ひび割れ(クラック)によっては、基礎コンクリートを貫通してしまっていることもあり、これは大きな懸念材料となります。

ひび割れの計測

貫通していると言っても、建物の外部からだけの確認ではわからないことが多いです。巾の大きなひび割れ(クラック)がある場合は、その可能性も考えて基礎の裏側(内側)からのインスペクションもすべきでしょう。つまり、室内の床下へ潜って該当箇所を確認するのです。

はっきりと貫通している場合、床下が暗いこともあり、ひび割れからわずかに光が漏れていることがあります。これは貫通していることの証となります。ただ、床下へ潜った際には、外部でひび割れを確認した箇所以外においても関連のありそうな症状がないかどうかインスペクションすることも大事です。

基礎のひび割れ(クラック)が貫通している場合、その補修が必要なことは言うまでもありません。工事会社と適切な補修方法を打ち合せて早めに対処するようにしましょう。

ちなみに、ひび割れから雨水が侵入してしまい、基礎内部の鉄筋に錆が生じることがあります。これはひび割れ(クラック)していなくとも、起こりうることですから対処を検討しなければなりません。

購入しようとしている住宅の基礎(外部)に大きなひび割れ(クラック)があるときには、床下からも確認することを必須だと考えた方がよいでしょう。建物によっては点検口が無い等の理由により床下を十分に確認できないこともあります。そのときは、無理に買わずに慎重に検討してもよいのではないでしょうか。

ちなみに、ひび割れ(クラック)が生じた原因についてもわかった方がよいです(判断しづらいときもある)。原因としては、コンクリートの打設工事や基礎配筋工事の施工が雑であったとか、地盤に問題があることもあります。

これを判断していくためには、基礎以外に何か関連する症状がないか建物全体を点検しなければなりません。外壁や室内の壁にひび割れがないか、床や壁に傾きや歪みがないか、基礎にひび割れ以外の症状(ジャンカ等)がないかも確認してから、判断してください。

ただ、難しい判断となることも多いため、やはり専門家に相談して現地をみてもらうようにしたいところです。不動産仲介業者に相談しても基礎や壁などのひび割れについて的確にアドバイスできる人は少ないですから、建物の専門家である建築士に相談した方がよいでしょう。

 
執筆者:荒井康矩(ホームインスペクションのアネスト