新築住宅の瑕疵保険

新築住宅(分譲住宅)を購入したり、注文建築で住宅を新築したりした場合、売主や建築会社(ハウスメーカーや工務店)によって10年間の保証がなされる。これは、住宅の品質確保の促進等に関する法律によって決められていることであり、建築会社等に課せられた義務である。

このことを住宅・不動産業界では10年保証と呼ぶことがある。この新築住宅の10年保証は、構造耐力上主要な部分(基礎、柱、屋根、床、小屋組、土台、筋交いなど)と雨水の浸入を防止する部分(雨漏り)が対象となるものであり、設備の故障や仕上げ材、断熱材の施工不良などは対象とならない。

法規で定められた10年間というのは最低限度であるため、建築会社によってはもっと長期間の保証(例えば30年など)を謳う会社もあり、購入者や施主にとっては会社選びをする上で1つの判断材料となるものである。

また、期間のみではなく、保証の対象範囲も上記のもの以外へ拡大していることもあるため、その点も契約前にヒアリングしておきたい注意点である。

ところで、10年間の保証が義務付けられているとはいえ、保証者(建築会社など)が倒産してしまっていては購入者や施主はたまらない。契約時点で10年間、もしくはそれ以上の期間も健全経営で会社が継続するかどうか見分けるのは容易ではないし、この業界は倒産も多い。

このリスクを抑制するため、2009年には建築会社等は瑕疵保険に加入するか、または保証金を供託するかのいずれかが義務付けられた。それを定めたものが特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律である。

瑕疵保険に加入していれば、建築会社等が倒産していた場合、購入者や施主は保険法人に対して保険金を直接に請求できる。ちなみに、倒産していない場合には建築会社等に対して補修等を請求することができる。

瑕疵保険についてこのホームインスペクションの情報サイトで取り上げているわけだが、ホームインスペクションと関連があるのはここからである。

この瑕疵保険に加入するには、一定の現場検査を受ける必要がある。この検査は木造2階建てであれば建築中と完成時の合計2回の検査である。建築会社等の担当者から、「瑕疵保険の検査を受ける住宅であるため施工上の問題は無く安心である」と説明を受けることがよくあるようだ。

しかし、瑕疵保険の加入に必要な検査は簡易的なものであり、施工ミスや不具合を未然に防ぐという意味ではあまりに簡易的すぎる。あくまで保険加入に必要な基準の確認であって、様々な施工ミス等を防ぐためのものではないことを理解しておかなければならない。

1回の検査につき、10~20分程度で終えることが多いが(検査員が30分も現場にいると長いと思われる)、細かなところ、ミスや不具合が起こりやすいところまでしっかり検査するには、この程度の検査では不可能である。購入者や施主が依頼する建築中の検査(ホームインスペクション)では、工程などにもよるが1~1.5時間、長いときには2時間程度かかるものである。

もう1つ大事な点として、建築会社等が瑕疵保険の加入ではなく供託を選択している場合、この簡易的な第三者検査すら受けていないということである。

ちなみに、誤解してはならないことは、瑕疵保険の検査を受けていないから、もしくは瑕疵保険の検査が簡易的であるからといって施工品質が悪いと言えるわけではないことである。本来は施工会社や工事監理者がしっかりチェックしておくべきものであり、技術力・知識・経験のある会社や担当者であれば、瑕疵保険や第三者の検査(ホームインスペクション)の利用に関係なく品質は確保されるものである。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。