築16年の中古住宅のホームインスペクションの事例 No16

これまでも何物件か中古住宅のホームインスペクション事例を紹介してきましたが、今回は特に大きな指摘事例がなかった物件についてご紹介します。大きな問題はなかった場合でもホームインスペクションを利用したときに、インスペクターとして診断を行う一級建築士からどのようなアドバイスや意見をもらうことができるか参考にしてください。

築16年の中古住宅のホームインスペクションの事例 No16

今回のホームインスペクションの対象となる物件は、木造軸組工法の一戸建て住宅で2階建て、築年数は16年を経過しています。築16年の住宅は、新築当時の施工品質やその後の所有者の管理・メンテナンスによって建物の状態に大きな差が表れます。

さて、今回の物件ではどうだったのでしょうか。

1.建物外部のインスペクション結果

多くの場合、ホームインスペクションは建物外部から始められますが今回もそうでした。

1-1.外壁サイディングのメンテナス

外壁はサイディング仕上げですが、割れや欠損はなく外壁の機能を発揮できる状況にあり、指摘として挙げるべき事項はありませんでした。ただ、表面の塗膜が劣化してきており、変色が見られる状況です。外壁材は太陽光や雨にさらされる部位ですから、時間の経過でどうしても劣化が進んでいってしまうものです。

外壁のメンテナンスは、10~15年程度が1つの目安です(素材によっては15年以上)。この中古住宅では、目安となる期間を過ぎており、実際に劣化が進んでいる状況ですから、購入後は早めにメンテナンスを考えた方がよいことをアドバイスしました。

コストはかかるものの、早めのメンテナスをすることで長持ちさせることになりますから、結果的に負担を抑えることにもなります。

また、サイディングのジョイント部分のシーリング材の劣化も進んでいました。こちらはサイディング材よりも寿命が短く、劣化の進行も早い状態でしたので急いで対応する必要があることを説明しました。現状では雨漏り痕はありませんでしたが、こういった箇所が原因となって今後雨漏りが起こるリスクがあるため、緊急度の高い補修箇所であることをアドバイスしています。

1-2.隣地との境界が不明

建物本体に関することではありませんが、住宅診断(ホームインスペクション)のアネストでは境界が現地において目視で確認できる状況であるかどうか見ています。

中古住宅の売買においては、残念ながら境界が不明瞭なままで取引されていることが少なくなく、将来の建替えや増改築、売買の際に隣地ともめることが多いので、自分たちが購入するタイミングでは境界についてよく確認しておくべきです。

今回の物件でも、残念なことに現地で境界杭など境界を明らかに示すものがなく確認できませんでした。よって、不動産仲介業者を介して売主に境界について確認を求めるようお願いしました。境界については、売主と隣地が現地立会いのものと位置を確認して合意してもらうなどの作業が必要になることもあります。

1-3.隣地からの越境物

建物本体以外に関するアドバイスでは、越境物に関することも多いです。今回の物件でも、ホームインスペクションの依頼者が購入しようとしていた物件の敷地に対して、隣地のバルコニーの一部が越境してきていました。

売主は以前から越境されていることについて理解していたものの、隣地の所有者に対して改善等を求めることもなかったとのことです。それほど大きな越境ではないものの、いつまでも解決せずに放置しておくと将来の自分たちの建替え時などに影響する可能性もあります。

また、購入後、自分たちから隣地に撤去等の改善を促すと隣地との関係悪化が心配されます。そこで、購入する前に、売主と隣地との間で話し合って解決してもらうよう促すことが推奨されます。

この物件のケースでは、以下のように売主と隣地の間で取り決めて頂くことで解決し、買主も安心することができました。

  • 将来、隣地が建替えや該当部分に関する増改築をする際には、越境部分を撤去してもらうこと
  • 越境しているバルコニーから購入する土地内へ雨水等を落とさない(排水ルートの変更)よう変更工事を引渡しまでに隣地の責任と負担で実施する

このようにして、将来のリスクを少しでも無くしていくことは大切な作業です。こういった対応について、積極的な不動産仲介業者もあれば、面倒だからという理由で何も説明せずに取引を進めようとする業者もあります。ちなみに、面倒だから何もしない業者に理由を聞いても面倒とは言わず、「普通はそのまま売買するものだ」と言っていることが多いので注意しましょう。

必ず、すぐに隣地との境界や越境問題を解決できるわけではないですが、すぐに解決できないことがわかれば、それでも買うべきかどうか検討することもできます。

2.建物内部のインスペクション結果

築16年の中古住宅ですから、当然ながら経年により劣化しているところはいくつもあります。そういった経年劣化箇所は今回のレポートでは省略しまして、その他のアドバイスを見ていきましょう。

2-1.バルコニーの手すりの補強の必要性

2階のリビングからバルコニーに出て床の防水状況や勾配などの項目を診断していきましたが、問題はありませんでした。しかし、手すり壁に少し力を加えるとぐらつきが感じられる状況で、強度に不安を覚えるものでした。ぐらつきの程度から考えても心配されるものであり、洗濯物を干すときなどに体重をかけたときが心配されますから補強した方がよいとアドバイスしました。

2-2.床下に断熱材がない

対象物件の床下をインスペクションした際、断熱材が設置されていませんでした。義務ではないものの、建築された当時は既に一般的に断熱材の設置がなされている時期であり、建築会社の仕様レベルについて少々疑問を感じるものです。

断熱材がないことから、断熱性能、省エネルギー性能という点において劣る中古住宅ということになります。もっと古い時代の住宅(例えば1980年以前の建築)であれば、断熱材が無いことが多かったので、そのような印象を受けることはないのですが、同年代の建物と比較すれば劣る仕様だと考えてよいでしょう。

冬や夏の室内における快適性をあげるためにも、購入後に断熱材の設置を検討するようアドバイスしています。

2-3.屋根裏には断熱材がある

今回の物件では、床下になかった断熱材が屋根裏では設置されていることを確認できました。なぜ、床下だけ設置していないのかと疑問を感じる人も多いと思いますが、実は以前は同じように床下だけ断熱材がない物件というものも見られました。

建築会社が床下は地面だから断熱性はそれなりにあるだろうと安易に考えていたのかもしれません。

ちなみに、屋根裏の断熱材は敷き詰め方が雑であったために隙間ができています。断熱材が抜けおちているわけではないので、もう少し丁寧に敷き詰め直せば良好な状態にできますから、床下の断熱材設置工事の際に屋根裏の整理もリフォーム業者に依頼すればよいとアドバイスしています。一緒に依頼すれば、屋根裏についてはそれほどコストもかからないからです。

 

いかがでしょうか。大きな問題がないと判断している物件でも、ホームインスペクションを利用することで専門家からその後のメンテナンスや補修の緊急性について様々なアドバイスをもらうことができることがわかります。

住宅購入時には、将来のことも考えてホームインスペクションを検討してもよいのではないでしょうか。

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