失敗しない中古アパート購入のために!ホームインスペクションのメリットと建物の不具合

ホームインスペクションのメリットと建物の不具合

中古アパートを購入する人、アパート投資をする人にとっては、その収益性・利回りは大きな関心事でしょう。そして、建物の修繕等に係るコストがその収益性に影響することは明らかなことですね。

それだけに、建物の状態を把握したいとのニーズは高く、購入する際にホームインスペクションを利用する人が増えています。大規模な建築物では、ドゥーデリジェンス(価値やリスクを正確に把握するために行う、専門家による詳細な調査)が昔から行われてきましたが、個人や小規模事業者によるアパートの売買に際してはインスペクションが利用されるようになってきました。

アパート購入・投資で失敗しないために、ホームインスペクションがどう役立つのか、メリットや実際に見つかる建物の不具合を解説します。

はじめに:なぜアパート購入にホームインスペクションが必要なのか?

中古一戸建て住宅を買う人が、ホームインスペクション(住宅診断)を利用することは非常に多いですが、マイホームではなく、投資用に中古アパートを買う人のなかでもインスペクションを利用することが多くなっています。利用者が増えているのは必要だと考える人が多いからですが、その理由を紹介します。

中古アパート購入で後悔しないための第一歩

中古アパート投資が人気です。以前からのアパートオーナーが、複数物件を所有することは多いですが、新たにアパート投資を始める人も増えています。投資にはリスクがつきものですが、アパート投資も同じで、収益性の面で計画通りにいかず、失敗・後悔する人も多いです。

その原因の1つが、想定外の建物の修繕コストです。ホームインスペクションは、このリスクを抑制する(完全になくすことはできないけど)第一歩だと言えます。

見えないリスクを「見える化」する重要性

専門家(ホームインスペクター)によるホームインスペクションを利用することで、見えないリスクを見える化することができます。ここで言う見えないリスクとは、物理的に見えないというより、よく見ると見えてはいるけど、それをリスクだと気づけていない症状のことです。

建物に関する深い知識や豊富な経験がある人とそうではない人では、同じ症状・状況を見ても、それをリスクかどうか検討・判断する力に大きな違いがあります(もちろん、症状によっては誰でも「これは危ない」と思えるものもありますが)。

ホームインスペクションは、依頼者にリスクに対する気付きを与えてくれるようなもので、中古アパートを購入したり、所有したりする人にとって重要な役割を果たしてくれます。

新築建売のホームインスペクション

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第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

ホームインスペクションとは?基本を理解しよう

ホームインスペクションとは

ホームインスペクションについて、詳しく知らない人は多いです。アパート投資を何棟もしている人なら、何度も利用することがありますが、初めて利用を検討している人も多いため、知らないのは無理もありません。

専門家による建物の「健康診断」

ホームインスペクションをわかりやすく言い換えれば、建物の健康診断です。人が、健康診断を行うのと同じで、本来なら建物にも必要なことです。これは、アパートや一戸建て、ビルなど全て言えることです。ホームインスペクションとは、専門家による診断で、建物の状態を把握できるサービスなのです。

診断する主な項目(構造、雨漏りなど)

ホームインスペクションで診断する項目にはいろいろなものがありますが、代表的なものを紹介します。

構造耐力に関わるもの

建物の構造耐力に関わるものとしては、基礎の劣化(著しいひび割れ・欠損など)、外壁の著しい割れ、床組み(土台など)や小屋組み(梁など)の劣化(著しい割れ・欠損・腐食など)、床・壁の著しい傾きなどが挙げられます。

こういった割れ腐食の全てが、直ちに構造的に危ないというわけではなく、その発見部位や状態によって検討しなければなりません。

雨漏り・防水

調査時点で雨漏りしていることも問題ですが、今は漏水を確認できなくても、このままで早期に雨漏りしそうな状態も望ましくないですね。そういった視点で、外壁の継ぎ目や配管・サッシ等の貫通部回り、ベランダや屋上の防水状況(浸水しうるひび割れなど)を調査します。

その他

建物の構造や雨漏りに関する調査が重要であることは、誰でも何となくイメージできますね。しかし、それ以外にも買うときやメンテナンスを検討するときにしっておくべき症状があります。たとえば、床下や屋根裏で確認できる断熱材、シンクの下部や床下で確認できる配管などがそうです。

これらは、調査時の建物の状況や調査条件次第で、ほとんど確認できない、もしくは全く確認できないこともありますが、可能ならば確認しておきたい項目です。

新築と中古アパートのインスペクションの違い

この記事は、中古アパートを対象として書いていますが、新築アパートを建築する人がホームインスペクションを利用することも多いです。中古では、建物の劣化状態を確認していますが、新築では施工ミスの有無を確認しています。

建築途中に何度も検査することもありますし、竣工時に1度のみ検査することもあります。それは依頼者次第です。

新築時は、全ての住戸が空室のため、依頼者が希望する部屋数を確認することができますが、中古の場合は居住者がいるために、確認できない住戸も多いです。満室のために、室内を全く調査できない物件もあります。

アパート購入者がホームインスペクションを行う3つのメリット

ホームインスペクションを行う3つのメリット

アパートを購入するときにホームインスペクションを行うことについて、購入者にとってのメリットを紹介します。

購入判断に役立つ:専門家の客観的な視点で建物の状態を把握

購入者にとっての最大のメリットは、専門家が客観的な視点で行うインスペクションの結果を、購入判断の参考とすることができることです。インスペクションの結果は、建物の状態を表示しているものですから、依頼者は建物のその時点の状態をしることができるわけです。

どのような中古アパートでも、それなりに劣化事象はあるものですが、その劣化にもいろいろなレベルがあります。早急に補修すべき事象が多い物件なのか、状態が良くてすぐに補修すべきことが無い物件なのかで、建物の評価が異なりますね。これを購入前に知られるなら、嬉しいことでしょう。

価格交渉に役立つことがある

インスペクションの結果で、補修費用が大きな金額になると予想された場合、単純に購入を中止するという判断もありますが、売主と価格交渉して購入に至るということもあります。不具合に気づかず、そのままの価格で購入していたら、補修費用を自分で負担するところを購入時の価格交渉で負担を売主に負わせるケースもあるわけです。

注意点として、一般的にインスペクションの結果で補修費用は算出されないので、調査結果を参考に工務店などに費用の相談をする必要があります。

アパート購入後の修繕計画を立てやすい

ホームインスペクションで建物の状態を把握することにより、どこを修繕すべきか、早急に補修すべきか、急ぐ必要はないかといったことを理解できます。これにより、アパートを購入した後のざっくりとした修繕計画をイメージしやすくなります。

購入直後に大きな費用がかかるのか、何年も先のことなのかをイメージできることは、結果的に購入判断の参考にもなりますね。

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中古アパートのインスペクションで見つかる不具合

中古アパートのインスペクションで見つかる不具合

中古アパートでホームインスペクションを行ったとき、実際に見つかることがある不具合について、その代表的なものを紹介します。

外壁や共用廊下の壁

建物の外壁では、構造または防水の面で心配されるひび割れや欠損が見つかることがあります。この症状は、共用廊下でも同様です。ひび割れの入り方によっては、構造耐力上の問題が疑われることもありますが、防水の点で直ちに補修すべきことが多いです。雨水の浸水によって、更なる劣化・被害が生じるからです。

バルコニー床裏・軒天

バルコニーの床面の裏側や軒天では、割れや水染み(雨漏りの可能性)が見つかることがあります。この部分の割れは、仕様・仕上げ次第では構造耐力上の心配がないこともありますが、雨水が浸水するリスクを考えるべきときがあります。風で舞った雨水が床裏・軒天から浸水する事例があるのです。

また、水染みが見つかったときは、既に雨漏りしている可能性を考えるべきです。バルコニーの床面や排水口、笠木などからの雨漏りの可能性です。

共用階段

共用階段も指摘事項が多い部位です。屋内階段であれば、共用廊下と同様のことがありますが、注意すべきは屋外階段です。屋外は、日照・雨・風にさらされているために劣化が早いです。特に鉄骨階段の場合、錆を伴う劣化進行により構造的に危険な状態となっていることもあります。

階段の踏面や構造部分(鉄骨材など)だけではなく、手すりのぐらつきも大事なチェックポイントです。

天井点検口の内部

中古アパートでも、空室などで室内調査を実施できるとき、ユニットバスなどの天井点検口の内部を確認できることがあります。この部分で、構造体の一部を確認できることがあり、梁や柱の腐食・金物の緩みが見つかることがあります。

また、ダクトが外れかかっている状態が見つかることもあります。酷いときは、何年もダクトがはずれた状態だったと思われる状態が見つかったこともありました。

床下

床下も一般的には室内調査、つまり室内に立ち入りしないと確認できないものですが、1階に空室があって立ち入り可能な場合で、且つ床下点検口があるならば、ぜひ診断してもらいましょう。

基礎の著しいひび割れや欠損、金物の錆・緩み、漏水、断熱材の不足や落下などが見つかることがあります。

まとめ:ホームインスペクションは「安心」への投資

ホームインスペクションは、物件の価値を守り、安定したアパート経営に繋げるための「安心」への投資です 。専門家による客観的な視点で建物の状態を把握し、購入判断や価格交渉、購入後の修繕計画に役立てることができます 。中古アパート購入で後悔しないための第一歩として、ホームインスペクションの活用を検討してみてはいかがでしょうか 。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。