ホームインスペクションの費用は誰が払うべきか?
建物の状況を把握するために行う建物診断であるホームインスペクションですが、この費用は誰が負担するべきでしょうか。特に、住宅を購入しようとしている人から、このご質問をされることがありますが、売主から聞かれることもあります。
そこで、以下のケース3つにわけて、ホームインスペクションの費用を誰が支払うべきか説明します。
- 住宅購入前に買主がホームインスペクションを依頼する場合
- 中古住宅の売主がホームインスペクションを依頼する場合
- 購入した住宅に欠陥が見つかったときにホームインスペクションを依頼する場合
それぞれのケースで、利用する目的に違いもありますし、その費用を支払う人にも違いがあります。ここでは、費用負担者のことを中心に、インスペクション費用がどれくらいかかるかについても紹介します。
住宅購入前に買主がホームインスペクションを依頼する場合
住宅の購入判断のために購入希望者がホームインスペクションを利用することは非常に多いです。この場合、購入希望者がインスペクション費用を負担するのが一般的なことです。
ときには「まだ買うと決まったわけではないのだから、売主がホームインスペクションの費用を支払うべきではないか?」と購入希望者から聞かれることもありますが、そういったことはほとんどないでしょう。
ただし、不動産会社が売主である場合、その不動産会社が費用負担しているケースも稀にあります。もしくは、不動産会社が指定するホームインスペクション会社を利用すれば負担してくれるということもありますし、不動産会社の社員が実施するというケースもあります。
しかし、これらはどうしても不動産会社よりのホームインスペクションになってしまうリスクがついてくるため、不動産会社に任せず買主が自分自身で費用を支払って利用する方がよいでしょう。
ホームインスペクションの料金(費用)は、5~15万円程度です。この負担を惜しんでリスクを負うかどうかです。一生に何度も買うことのない資産となる住宅ですから、かけるべきところに投資してもよいのではないでしょうか。
中古住宅の売主がホームインスペクションを依頼する場合
中古住宅の売主(一般個人の方)が自宅などを売る前にホームインスペクションを入れるということもあります。売却のための査定を不動産会社へ頼んだ際に、「販売開始前にホームインスペクションを入れますか?」と聞かれることがありますし、業者によっては、「入れる方がよいですよ」とおすすめされることもあります。
買主が希望してホームインスペクションを利用することが多いですが、なかには売主が希望することもあるということです。
その目的としては、事前にホームインスペクションをしておくことで、住宅購入検討者に安心感をもってもらうことができ、売れやすいのではないかという期待が大きく、ついで、売主の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)というリスクの排除が目的としてあげられます。
確かに売主がインスペクションをしている物件であれば買主がする必要も無く、喜ばれる可能性はあります。しかし、買主目線でみれば100%信用してよいものかと思案するところでもあります。もちろん人によって解釈が異なるところではありますが。
売主が自らの意思でホームインスペクションを入れるのであれば、もちろん売主が費用を負担することになります。
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第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。
購入した住宅に欠陥が見つかったときにホームインスペクションを依頼する場合
そして、購入後に何らかの不具合や欠陥の被害にあった場合の検査費用はどうでしょうか。
例えば、購入した新築住宅で雨漏りしたときには、雨漏りの原因や被害範囲を検査しなければなりません。その費用負担はどうなるのでしょうか。
新築した建築業者が自社で検査することが初期対応ですが、それは当然ながらその新築業者の負担で行うものです。しかし、買主が新築なのに雨漏りを起こすような住宅を建築した会社を信用できないと考えて、第三者の検査会社のインスペクションを利用することもあります。買主の希望としては、その費用負担を新築業者に求めたいところですね。
これについては、新築業者が費用負担に応じるケースと拒否するケースがあります。買主としてはしっかり交渉して負担を求めるとよいでしょう。検査を終えてから求めても話がまとまりづらいため、依頼する前に費用負担については話し合っておくことをおすすめします。
ちなみに、築10年以内であれば住宅瑕疵担保責任保険の対象として保険金で検査費用が支払われることもありますから、新築業者から保険会社に請求できることも伝えて交渉することも考えてください(この事実を知らない建築業者も多いです)。
基本的には依頼する人が負担するということ
ここまで見てきて分かったと思いますが、ホームインスペクションを利用したいと希望して依頼する人が費用負担することが基本です。それ以外のケースは稀であり、あまりあることではありません。
住宅の購入や売却のときだけではなく、所有する住宅のリフォームやリノベーション、賃貸活用などの参考にするときに利用する人も増えましたが、それらの場合でも、ホームインスペクションを利用したいと希望する人が費用負担しています。
自分で支払って、自分のために活かすということですね。
執筆者
全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。