建替えかリフォームで迷ったときに役立つホームインスペクション

建替えかリフォームで迷ったときに役立つホームインスペクション

主に住宅購入のときに購入判断の参考とするために利用されてきたホームインスペクション(住宅診断)ですが、最近はこのホームインスペクションの利用シーンがどんどん増えています。増えつつある利用シーンの1つが、所有する住宅を建替えするか、リフォームするかで迷ったときの活用です。

所有する住宅とは

建替えするべきか、それともリフォームするべきかで迷うことがあるのは、所有する住宅があり、その建物が古くて劣化が進んでいるときです。所有する住宅とは、長く自らが暮らしてきた自宅ということもありますが、両親などの身内が暮らしてきた住宅を相続などで取得したときもそうです。

無関係の他人が所有する古い中古住宅を購入するときは、購入前の段階で補修を含むリフォームを行ってから暮らすのか、もしくは建て替えを前提として購入するのか決めているはずですが、相続で取得したときは、取得する前後から考え始めるものです。

建替えするべきかリフォームするべきかを利害関係者に相談しても判断できない

老朽化しているものの、自宅もしくは相続により取得した住宅に住み続けたい場合、建替えしなければいけないのか、またはきちんとリフォームすればまだまだ長く住み続けられるのか迷う人は本当に多いです。そのようなとき、新築を主な事業とするハウスメーカーや建築会社に相談したり、リフォームを主とする建築会社に相談したりすることが多いようです。

新築主体のハウスメーカーに相談したら

新築を主とするハウスメーカーにとって、土地を所有するオーナーこそが最もターゲットとして狙うお客様です。これから土地を探して購入するという人は、土地が見つかるかもわからず、時期もいつになるかわかりませんが、既に土地を所有する人であれば大きな障害がないことになりますから、それだけで優良顧客と考えることもあるでしょう。

そのような最もターゲットとして狙っている人から、「自宅が古いので建替えするべきか、リフォームするべきか悩んでいるのです」と相談されれば、建替えしたほうがよいとアドバイスするのは当然です。「古いので基礎や土台が危ないですから、建替えしなければいけないです」などと話すのです。

営業色が強くなるために直接的なアドバイスではなくても、建替えを決断させるように努力するのは言うまでもありません。

リフォーム(リノベーション)の建築会社に相談したら

住宅のリフォームやリノベーションを主とする建築会社に同じように相談する人もいます。しかし、リフォームを受注したいわけですから、こちらも新築を狙うハウスメーカーと同様にリフォームを奨めることでしょう。「しっかり補修すれば、リフォームで十分ですよ。新築するなんてもったいないです」などと説明することでしょう。

第三者のホームインスペクションの利用で新築・リフォームを検討する

利害関係者に大事な住宅の建替え・リフォームに関する相談をして、その会社や営業マンのアドバイスだけで決断するのはリスクが高いです。そして、このことには誰もが気づいていることです。そこで、建替えするべきか、リフォームするべきか検討するために、利害関係のない第三者にホームインスペクション(住宅診断)してもらい、その診断結果を参考として検討する人が増えているのです。

第三者のホームインスペクション

ホームインスペクション(住宅診断)でチェックすること

ホームインスペクションでは、基礎や土台の状態をチェックしてもらうことはもちろんですが、床や壁の傾き、ひび割れなどの構造的に心配される症状の有無、そして主要な構造部分の著しい劣化や腐朽の有無などをチェックしてもらう必要があります。

建物の外側からと内側からの両方でインスペクションを行いますが、床下や小屋裏の確認が非常に重要です。床下に潜るための点検口(床下へ入る入り口となる箇所)が無い場合には、点検口を新たに設けてでも確認してもらう方がよいです。小屋裏についても同様で、点検口が無いならば設けてから確認してもらった方がよいです。

床下では、基礎を内側から確認できますし、土台や大引といった主要な構造部分を確認することもできます。小屋裏では、柱や梁などの主要な構造部分を確認することができます。これらを利害関係の無い第三者にきちんとチェックしてもらってから、建替えとリフォームについて検討しましょう。

ホームインスペクション(住宅診断)で新築・リフォームを選択してもらうのではない

注意しておきたいことは、第三者のホームインスペクションを利用すれば、診断した人から建替えすべきかリフォームすべきかの結論を教えてもらえるわけではないということです。あくまで、その決断を下すのは自分自身であり、その判断のための客観的な材料を提供してもらうということです。

建物の老朽化がどんなに進んでいる住宅であっても、十分な資金さえ投じればリフォームで住み続けられないということはありません。どのような住宅でもリフォームで対応はできるのです。しかし、そのリフォームに投資すべき金銭があまりに多額なものであるならば、新築したほうがよい(建替えたほうがよい)と考えるわけです。

その視点で、診断結果や診断担当者のアドバイスから、長く住み続けるために必ず補修や取替え等をすべき箇所を確認し、その補修等にかかる費用を算出して検討するとよいでしょう。その費用の算出は、ホームインスペクションをする人や会社に出してもらうのではなく、実際に工事をする可能性のある建築会社に見積りを出してもらう方が確実です。

リフォーム等の建築費用は、同じ工事内容であっても会社によって非常に大きな開きがあり、工事を請け負わないホームインスペクション会社に算出してもらうことには、それほど意味がありません。その費用でリフォームできる保証など全くないからです。基本的に、第三者性を保つホームインスペクション会社は工事費用の算出も行いませんが。

リフォームなどの建設業も行う会社にホームインスペクションを依頼する人もいますが、工事の受注が最大の目的であることから、工事受注のための診断結果やアドバイスが提示されるリスクがあり、本当の客観的な情報を得られないことが多いため、建設業をしていないホームインスペクション会社を選ぶことが重要な条件です。

新築とリフォームの費用を単純比較してはいけない

新築なら1,800万円であるのに対して、リフォームなら1,200万円であれば、新築の方がよいと判断する人もいればリフォームの方がよいと判断する人もいるでしょう。それは、それぞれの考え方や都合によってかわるものですから、自分で判断しなければいけません。

ちなみに、リフォームにかかる費用と新築(建替え)にかかる費用を単純に数値のみで比較してはいけません。新築はきちんとコントロールすれば、それほど当初予算からぶれません(仕様レベル・グレードやプランの変更は別です)。一方でリフォームの場合は、解体してから想定以上の補修の必要性に迫られることがあるため、当初の見積りよりも予算を多めに見ておく必要があります。

所有する住宅の建て替えとリフォームで悩んだときには、第三者のホームインスペクション(住宅診断)を利用してみるとよいでしょう。「建て替え?リフォーム?」も参考にしてください。