新築住宅のホームインスペクションとは?利用タイミングと必要性、費用、依頼の流れを解説

新築住宅のホームインスペクション

ホームインスペクションは、新築住宅に対しても利用されることが多く、中古住宅のためだけにあるものではありません。毎日、全国で多くの人が新築住宅の購入や建築に際して依頼しているのです。

多くの人が利用しているとはいえ、一生のうちで5回も10回も利用する人は不動産投資家を除けば、ほとんどおらず、一度か二度目の利用だという人が多数を占めています。それだけに、慣れていない専門的サービスの依頼ということになるので、インスペクションについてはわからないことが多い人もたくさんいます。

そこで、ここでは新築住宅を購入する人を対象として、ホームインスペクションの基礎知識、利用のベストタイミング、依頼の必要性と効果、依頼者が負担する費用(料金)、実際に依頼する場合の手続きの流れについて解説します。

新築物件を買う予定の人や、既に契約済みの人にも役立つ内容となっていますので、ご覧ください。

新築住宅のホームインスペクションとは?まず基礎を知ろう!

新築のホームインスペクションの基礎

ホームインスペクションは、不動産の購入や売却、リフォーム、メンテナンスなどの際に利用される建築専門的サービスです。これは、住宅の購入者や売主がその建物の状態を把握し、補修等の対応をすべき欠陥(施工不良)や著しい劣化を特定するための建物調査です。

住宅購入の失敗・後悔を防ぐために利用される

ホームインスペクションは、住宅を購入する人が利用することが最も多く、買主にとっての購入の失敗や後悔を防ぐことを目的として活用されています。一方で、売主が自宅を売却した後の損害賠償請求リスクを抑制するために利用するケースもあり、今後、より多様な目的のために利用されることになるでしょう。

新築住宅でも利用が非常に多い

ホームインスペクションは、新築住宅に対しても非常に多くの人が利用しており、建売住宅の売買契約を締結する前に購入判断材料として利用したり、建売住宅を購入後の人や注文建築の家を建てた人が、完成後・引渡し前に利用したりしています。

一部では、新築一戸建てに限らず、新築分譲マンションでも利用している人もいます。

インスペクションは、中古住宅向けのものとの先入観を持っている人もいますが、実はこのように新築でも多く利用されているのです。

調査する人をホームインスペクターと呼ぶ

住宅の建物を診断する人のことをホームインスペクターと呼ぶことが多くなりました。ホームインスペクターは、似た名称も含めていくつかの民間組織・企業が名付けていますが、何の資格や経験がなくても自称する人もいるので依頼者としては注意が必要です。担当のホームインスペクターが、建築士や既存住宅状況調査技術者の資格を持っているかどうかは、最低ラインの確認事項です。

新築建売のホームインスペクション

ホームインスペクションの依頼なら

第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

新築住宅に対して利用すべきベストタイミング

ホームインスペクションを利用するタイミングは、その効果を最大限に発揮するために大変重要なポイントです。とりあえずの利用で後悔することのないように、新築住宅に対して利用するべきタイミングを紹介します。

利用すべきベストタイミング

建売住宅の完成物件を売買契約する前の人

既に建物が完成している建売住宅をこれから買う人、つまり売買契約を締結する前の人なら、ホームインスペクションを利用するベストタイミングは、売買契約の締結前です。

契約前に診断して、もし大きな欠陥(施工ミス)が見つかった場合、契約前に補修するように売主と交渉することができますし、見つかった問題の大きさ次第では、購入を中止することもできるからです。このタイミングで購入を中止しても買主が売主へ負うペナルティ(違約金など)がなく、負担なく、次の物件探しへと動くことができるメリットがあります。

不動産会社から、契約前には実施できないと抵抗にあうケースもありますが、リスクを負って購入するのは買主ですから、そこはしっかり交渉を試みてください。

建売住宅の完成物件を既に売買契約した人

建売住宅の完成物件を現地見学するなどして、既に売買契約を締結済みの人なら、その住宅の引き渡し前にホームインスペクションを利用してください。注文建築を建てた人で、既に建物が完成または完成間近の人も、引渡し前に利用してください。

このタイミングでは、売主やハウスメーカー側から、「引渡し前の立会いを行いましょう」と積極的に提案されることもありますが、買主側から要望しないとそういった機会を設けてくれないこともあるので、注意しましょう。

この建物完成後、引き渡し前のタイミングで行うホームインスペクションのことを、内覧会同行や施主検査立会いなどと呼ぶことも多いです。

引き渡し後に行うよりも、売主やハウスメーカーに対して補修を求めやすく、交渉しやすいのでお勧めです。

これから着工する人

注文建築の家をこれから着工する人や、着工する前の建売住宅を契約した人なら、着工してすぐの基礎工事から、構造躯体、防水、断熱などの各工程で行う建築途中のホームインスペクションを検討してください。

完成してからでは目視確認することができないところまで、専門家に検査してもらうことができ、最も建物の施工品質に対する安心感が高いものとなります。

一部の建築会社、ハウスメーカーが、建築途中の検査の受け入れを拒否する事例もありますが、簡単にあきらめず交渉するよう心掛けましょう。

建築途中の人

注文建築の家で既に建築工事が始まっている人や、建築中の建売住宅を買った人なら、建築途中から完成までに複数回のホームインスペクションを検討するとよいでしょう。

その時の工事進捗や建物の構造・工法などによって、適切な検査タイミングが異なるため、可能ならば現場の工事進捗を確認できる写真を用意してから、ホームインスペクション業者に相談するとよいでしょう。図面と現地写真があれば、業者から検査のベストタイミングを提案してもらうことができるでしょう。

新築に対するホームインスペクションの必要性と効果

ホームインスペクションは中古住宅向けのものと考えている人もいますが、前述したように新築住宅に対しても多くの人が利用しており、実際に様々な指摘事項が見つかっています。ここでは、新築でも利用価値が高いこと、つまり必要性があることと、利用することによる効果を紹介します。

構造耐力に関する施工不良の指摘

新築でホームインスペクションを行うと、構造耐力に関わるような施工不良が見つかることが少なくありません。その一例を写真付きで紹介します。

基礎の構造クラック

床下で見つかった基礎の構造クラック(ひび割れ)の写真です。完成した時点で既に巾1mmの大きなものです。一般的には、0.5mmで大きなもので、0.3mm以上は補修を検討したいものです。新築時点なので、まだ時間の経過と共に大きくなる可能性もあります。

基礎の構造クラック

構造金物の取り付け不良

屋根裏(小屋裏)や床下では大事な構造金物をチェックすることができますが。下の写真は屋根裏で見つかった構造金物の取り付け不良です。釘できちんと止められていません。

構造金物の取り付け不良

基礎配筋工事中のかぶり厚さの不足

新築工事中のインスペクションで見つかった指摘事項も紹介しておきます。下の写真は基礎配筋検査で見つかったもので、基礎のかぶり厚さが不足している状況です。かぶり厚さとは、鉄筋から基礎コンクリートの表面までの距離で、コンクリート打設前に計測して確認します。

基礎のかぶり厚さ不足

以上のように、新築住宅でもインスペクションを行うと大事な指摘事項が見つかっているのです。その必要性が理解できますね。

防水・断熱などの性能面に関する施工不良の指摘

構造耐力に関わる指摘事項も大事ですが、その他の住宅性能に関わる施工不良が見つかることも多いです。その一例を紹介します。

断熱材の設置不良

床下や屋根裏(小屋裏)には断熱材が施工されているため、その施工状況をチェックすることができます。下の写真は床下の断熱材が落下してしまっている様子です。これと同等の指摘が出る物件は多く、床下の指摘事項としては最も多い事象です。

断熱材の設置不良

外壁のコーキングの施工不良

外壁のコーキングが適切に充填されていない状況です。こういった箇所から外壁内部へ雨水が浸水することになるので、補修が必要です。外壁材の継ぎ目やサッシ周りなどで、シーリングの施工不良が見つかることも多いです。

外壁のコーキングの施工不良
新築建売のホームインスペクション

ホームインスペクションの依頼なら

第三者の一級建築士によるホームインスペクション(住宅診断)は、住宅売買・メンテナンスなどに役立つ専門的な技術サービスです。施工不具合や補修すべき劣化事象の有無をプロに診てもらえる。

依頼者が負担する費用(料金)

ホームインスペクションを新築住宅に対して利用する際にかかる費用がいくらであるか、紹介します。利用するタイミングやオプションの利用有無、建物の条件によっても異なりますが、以下を参考としてください。

完成物件の検査費用

項目検査費用
基本料金5~7万円
床下調査1~4万円
屋根裏調査1~4万円
詳細な報告書0~1万円
完成物件の場合

建築中の住宅の検査費用

項目検査費用
1回あたり4~7万円
床下調査(完成時など)1~4万円
屋根裏調査(完成時など)1~4万円
建築中の場合

以上の金額が目安ですが、建物面積が大きいと加算が生じますが、対象住宅の所在地次第では交通費・出張料の上乗せが生じることもあります。

ホームインスペクション業者より見積りを取って確認してください。見積り依頼に際しては、物件情報(所在地・構造種別・建物面積など)が必要になるため、手元に資料を用意してから問い合わせてみましょう。

実際に依頼するときの流れ

新築住宅において、実際にホームインスペクションを依頼するときの流れを紹介します。対象物件が完成物件であるか、着工前であるかによって違いがあるため、ケースを分けて紹介します。

依頼するときの流れ

完成物件の売買契約前の場合

売買契約を締結する前にインスペクションを行うケースの流れです。完成物件を買うなら、この流れが最もオススメです。

  1. ホームインスペクション業者に見積り依頼と日程確認
  2. 不動産会社にホームインスペクションを入れる旨を申し入れ
  3. 調査日時の調整と確定
  4. ホームインスペクション業者に申し込み(依頼)
  5. 必要書類を手配
  6. 調査日にインスペクションを実行
  7. 報告書を受領
  8. 売買契約を締結
  9. 料金の支払い

以上のうち、1と2や、7~9は適宜、順序を変更するなどの対応となることもあります。

また、万一、売買契約前の利用を売主から拒否された場合は、次の「完成物件の売買契約後の場合」をご覧ください。

完成物件の売買契約後の場合

こちらは契約後、引渡し前に行うケースの流れです。

  1. 売買契約を締結
  2. ホームインスペクション業者に見積り依頼と日程確認
  3. 不動産会社にホームインスペクションを入れる旨を申し入れ
  4. 調査日時の調整と確定
  5. ホームインスペクション業者に申し込み(依頼)
  6. 必要書類を手配
  7. 調査日にインスペクションを実行
  8. 報告書を受領
  9. 料金の支払い

稀に、契約後・引渡し前のインスペクションを拒否するような不動産会社、建築会社がありますが、その対応は非常に残念なものです。対応が良くない業者ほど建物の施工でも問題を起こしていることが多いため、そこで安易に妥協せず、引渡し前の実行を目指して交渉してください。

着工前の物件の場合

これから建築を開始する住宅の場合は以下の流れで進めますが、状況次第で臨機応変な対応も必要となります。

  1. 建築会社または不動産会社にホームインスペクションを受け入れ可能か確認
  2. 建築工事請負契約または売買契約を締結
  3. ホームインスペクション業者と検査回数・検査タイミングを相談
  4. ホームインスペクション業者に申し込み(依頼)
  5. 必要書類を手配
  6. 工事および検査を開始(検査は予め取り決めたタイミングで行う)
  7. 報告書を受領

最初に、建築会社か不動産会社より許可を取らないといけませんが、ここで拒否された場合、その契約をするかどうかも検討してください。

検査の回数とタイミングは、ホームインスペクション業者と相談して決めるとよいですが、購入費も含めた全体の予算のことも考えておきましょう。

報告書は、一般的には検査を実施する度に提出されるので、仮に検査回数が6回であれば、報告書も6回提出されることになります。また、検査料金の支払い時期は、申し込みするときまでに確認しておきましょう。

建築途中の物件の場合

建築途中の住宅に対して、ホームインスペクションを入れたい場合、以下の流れで進めてください。

  1. 建築会社または不動産会社にホームインスペクションを受け入れ可能か確認
  2. 工事の進捗確認(できれば、現地で工事の写真を撮影)
  3. ホームインスペクション業者と工事進捗を伝えて、検査回数・検査タイミングを相談
  4. ホームインスペクション業者に申し込み(依頼)
  5. 必要書類を手配
  6. 検査を開始
  7. 報告書を受領

工事が進めば進むほど、大事な工程を確認できない可能性があるため、依頼するのであれば、スピードが大事です。上の1から5までは急いで進める必要があるでしょう。

ホームインスペクションを新築住宅に対して利用するか検討している人向けに、その基礎知識やタイミング、必要性、費用、依頼の流れを紹介しました。費用がかかることではありますが、大事なマイホームの施工品質のために、前向きに検討してはいかがでしょうか。

アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。