ホームインスペクション後に住宅購入をキャンセル

一般個人の方がホームインスペクションを利用する目的で最も多いのは、住宅購入判断の参考とするためです。購入前(契約前)のホームインスペクションで建物の問題点の有無とその内容を明らかにし、結果次第で予定通り購入するか購入を中止(キャンセル)するか判断するわけです。

住宅購入のキャンセル

ということは、当然のことながらホームインスペクションを利用した後に購入検討していた住宅の購入を中止することもあります。アネストでは、年間1500件以上ものホームインスペクション(住宅診断)を提供させて頂いておりますが、購入を中止する方が数%はいらっしゃいます。

それだけにホームインスペクション後に住宅購入をキャンセルするときの注意点を理解しておきたいところです。

ホームインスペクションの利用タイミングが購入前(契約前)であれば、購入を中止しても原則としてペナルティ(違約金など)は生じませんので、その点は安心です。しかし、なかには売買契約を締結してから利用される方もおり、契約後のインスペクションの結果を受けて購入を中止(キャンセル)する場合には売買契約を解約することになります。

この場合、支払い済みの手付金が返金されない可能性があります。また、タイミング等の条件によっては違約金が生じる可能性もあります。

基本的に売買契約後にホームインスペクションを利用する方は、建物に何か問題があってもキャンセルするつもりはないと仰られる方が多いですが、それでも想定をはるかに上回る問題が見つかった場合には「やはりキャンセルしたい」と考えることがあっても不思議ではありません。

たとえば、床下のインスペクションで土台に甚大なシロアリ被害があればどうでしょうか?

床下のシロアリ被害

ですから、できれば売買契約の前に利用してほしいものです。

ちなみに、売買契約後にホームインスペクションを利用した場合で、何か大きな問題が見つかったことを理由に購入を中止する(売買契約を解除する)場合において、全てのケースで必ず手付金が返金されないとは限りません。

たとえば、その見つかった問題点を売主が把握していたのに買主に黙っていたことが明らかな場合や、契約内容で売主の瑕疵担保責任があってそれに該当する瑕疵が見つかった場合(かつその補修等に多大なコストがかかる場合)ならば売主と交渉する余地があると言えます。

売主はともかく不動産仲介業までもが、そのまま取引を成立させたいと考えがちなため、そのときに不動産仲介業者がどこまで親身に考え、対応してもらえるかの問題はありますが、容易にあきらめる必要もないことを覚えておきましょう。

執筆者:荒井康矩(ホームインスペクションのアネスト