新築住宅の引き渡しに関する基礎知識と引き渡しの流れや買主が注意すべき点

新築住宅の引き渡し

新築の建売住宅を購入して引渡しを受ける前のタイミングや、注文建築の家を建てて建物が完成し、引き渡しを受ける前に、引き渡しとはどういうことをするのか?何を意味するのか?と疑問を持つことがあります。また、初めてのことだけに何か注意しておくべきことがないかと不安になることもあるものです。

住宅の売買契約や工事請負契約を締結してから、引き渡しに至るまでの流れがよくわからないけど、不動産会社の営業担当からきちんと説明を受けていないので、何をすればよいかわからず心配だとの声を聞くこともあります。

主に、初めて新築住宅を買う人を対象として、引き渡しとはどういうものであるか、その前後や当日の流れ、引き渡しの当日に買主が持参すべき物、そして、買主が注意すべき点について解説します。新築一戸建てであれば、建売住宅を買う人にも、注文建築の家を建てる人にも役立つ内容になっています。

新築住宅の引き渡しとは?基礎知識を紹介

新築住宅の引き渡しとは?

新築住宅を購入することが初めての人にとっては、わからないことも多い住宅の引き渡しですが、住み始めてから後悔しないためにも、まずは新築住宅の引き渡しに関する基礎知識を紹介します。

引き渡しとは住宅が買主のものになること

引き渡しとは、購入した物が、売主から買主の所有物にかわることを言います。住宅売買で言えば、売買契約を締結した住宅が、買主のものになることを意味しており、それは新築でも中古でも同じです。買主のものになるということは、それ以降、買主が自由に出入りしたり、使用したりできるということです。

建物の完成後にすべきもの

新築住宅の引き渡しは、建物が全て完成した後に行うものです。たとえば、キッチンやトイレの一部がまだ取り付けられていない状況や玄関ポーチのタイルを施工中の状況などで、行うものではありません。建築中、つまり未完成の住宅を引き渡すことは、一般的にはありません。

住宅の残代金の決済(支払い)は同時に行う

住宅の売買に際して、買主が金銭を支払うタイミングとして、購入する物件を決めて申し込みしたとき、売買契約のとき、そして残代金の決済のときの3回あります。そのイメージを掴むために、以下の事例を見てください。

(例)土地・建物を合わせて5,000万円の売買契約

日程支払項目タイミング金額
4月10日購入申込金の支払い購入申し込み時10万円
4月17日手付金の支払い売買契約の締結時240万円
(支払済みの購入申込金と合わせて250万円)
6月10日残代金の支払い引き渡し及び決済時4,750万円
(以下が内訳)
現金で250万円
住宅ローンで4,500万円
ちょっと一言

必ずしも上のとおりの金額・割合としなければいけないわけではなく、あくまでも参考値としての金額です。また、諸費用は別途で必要となります。

上のように、残代金の支払いは、上の表の「引き渡し及び決済時」のタイミングで行うもので、ほとんどの売買取引においって、このときの支払額が最も多くなります。

そして、引き渡しと残代金の支払い(=決済)は同時に実行するのが原則です。

所有権の移転申請は引渡しと同時に行う

引き渡しのタイミングをもって、実質的にその住宅は買主のものとなるのですが、登記については少し違います。

引き渡し手続きのなかで、司法書士が用意している書面に署名・押印するなどして、所有権移転の登記申請書類を作成し、残代金の決済を終えてすぐに、司法書士が登記申請を行う流れが一般的です。つまり、残代金の支払いと引き渡し、所有権移転登記申請を同日に行うということです。

登記申請から登記が完了するまでには、1~2週間ほどかかるため、引き渡し日の時点では、登記上はまだ買主名義にはなりません。

なお、住宅ローンを利用する場合、抵当権設定登記も同時に申請します。抵当権とは、簡単に言えば、その土地と建物について、住宅ローンを融資する金融機関に担保として提供したときに設定される権利です。

新築住宅の購入から引き渡し前後の流れ

新築住宅の購入から引き渡し前後の流れ

次に、新築住宅を購入してから引き渡しまでと、引き渡しの当日、そして引き渡し後の流れについて説明します。全体の流れを把握しておくことで、買主が心配しすぎることなく、ゆとりを持って対処できるようになるでしょう。

住宅購入(契約)から引き渡し日までの流れ

新築住宅を購入してから、引き渡し日を迎えるまでの流れを紹介します。

  1. 売買契約の締結と手付金の支払い
  2. 住宅ローンの申し込み
  3. 火災保険・地震保険の検討
  4. 建物の完成(契約時に未完成だった場合)
  5. 建物の状態チェック
  6. 是正工事(補修)
  7. 金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約)の締結
  8. 火災保険・地震保険の加入手続き
  9. 決済・引き渡し・所有権移転登記申請

以上が一般的にみられる流れです。

注文建築の家や売買契約後に着工する建売住宅の場合、「1.売買契約の締結と手付金の支払い」から「4.建物の完成」までは数か月(建物規模・プラン・建築会社などの条件によって異なる)の期間がかかるものです。

「5.建物の状態チェック」の機会は、内覧会と呼ぶことも多く、買主が現地で建物の状態などを確認する大事なときとなっています。

なお、火災保険・地震保険の検討や加入手続きは、保険商品や全体の流れ次第で時期がずれることもあります。

引き渡し当日の流れ

引き渡しの当日の流れを紹介します。必ず、以下のとおりになるとは限りませんが、概ねこの流れとなります。

  1. 現地確認で対象物件を最終チェック
  2. 不動産会社および司法書士が各書類を確認
  3. 登記申請書へ署名・押印
  4. 住宅ローンの融資実行・残代金の支払い・諸費用の精算
  5. 鍵の受け取り(売主から買主へ)
  6. 引き渡しに関する書類の受け取り
  7. 司法書士が所有権移転登記・抵当権設定登記の申請を行う

以上に挙げたもの以外に、対象物件の住宅設備機器などの取り扱い説明書や建物の設計図の受け取りも、引き渡し当日に行うことがあります。

引き渡し日以降に買主がすべきこと

引き渡し日の翌日以降に、買主がすべきことを紹介します。

  1. 退去物件の引き渡しと立会い
  2. 引越しと近隣への挨拶
  3. 住民票の異動
  4. 公共料金の手続き
  5. 建物や敷地の状態の点検
  6. 登記完了後の登記事項証明書と登記識別情報通知の受け取り

退去物件の引き渡しと立会いとは、それまで住んできた住宅について、賃貸物件ならオーナーや管理会社の立会い下で傷み具合の確認などをして引渡しを行います。

公共料金の手続きの手続きは、引っ越し日に合わせて行うように調整しましょう。ガスの開栓は、少し早めに手続きしておかないと、ガス業者の点検とタイミングがあわないこともあります。

そして、入居する前に、もう一度、現地で建物の状態(著しい傷や汚れが付いていないか等)や敷地の状態(著しい地面の陥没・割れがないか等)を確認しておきましょう。この時点で何か異変に気づけば、すぐに売主や建築会社へ伝えてください。

ちょっと一言

登記識別情報通知とは、昔の登記済権利証の代わりとなるものです。権利証は平成17年の不動産登記法の改正により、作成されなくなりました。

引き渡し当日の買主の持参物

引き渡し当日の買主の持参物

新築住宅の引き渡しの当日に、買主が準備しておくべき物を紹介します。

  • 現金(当日支払い分がある場合)
  • 身分証明書
  • 印鑑(実印と認印)
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
  • 銀行の通帳・キャッシュカード・銀行印
  • 売買契約書(または工事請負契約書)・重要事項説明書
  • その他、不動産会社や銀行、司法書士から指示されたもの

決済当日に支払う金銭の全てを住宅ローンの融資金から支払う場合、現金の準備は不要です。認印は使用しないこともありますが、念のために準備しておくとよいでしょう。売買契約書や重要事項説明書は、取引そのものに使うことはないものの、何かトラブルが生じたときに、契約内容をその場ですぐに確認できるよう持っておくと役立つことがあります。

引き渡しや決済の当日に忘れ物があると取引できないため、前もって不動産会社やハウスメーカーの担当者から、必要書類・持参物について案内があるはずです。その案内をよく見て、早めに準備しておきましょう。

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新築住宅の引き渡しに際して買主が注意すべき点

新築住宅の引き渡し時の注意点

最後に、新築住宅の引き渡しに際して、建売の買主や注文建築の施主が注意すべき点を紹介します。失敗やトラブルを抑制するために大事なことですので、理解しておきましょう。

早めに工事が遅延していないか要チェック

新築工事は、当初の計画通りに進まず、工事が遅延することも多いです。完成時期が大幅に遅れている住宅も少なくありません。完成時期の遅延は、現住居の退去問題とも関係してくるため、工事が遅れていないか売主や建築会社に聞く必要があります。

売主側から積極的に工事の進捗を知らせてくれているなら、状況を把握しやすいですが、聞かないと何も言ってくれない業者なら、注意が必要です。完成予定日の遥か前から、予定どおりに工事が進捗しているか、完成時期のずれが無いか聞くようにしましょう。

建物の完成状態の確認

この記事の前半部分で、新築住宅の引き渡しとは、建物の完成後にすべきものだと説明しました。完成したからこそ、残代金を支払って引渡しするのであり、これは当然のことです。

しかし、建物が完成していない、つまり未完成の状態であるにも関わらず、売主側の勝手な理由で引き渡しを強行しようとするケースが後を絶ちません。

勝手な理由とは、月末や年度末までに会社や営業担当者の売上目標達成をしたいからといったものなどです。この理由は、消費者側には全く関係ない事情であり、悪質ともとれるものです。

残代金の支払い後に、工事が雑になったり、いつまでも完成しなかったりといったトラブルが起こりがちなため、未完成物件の引渡しは拒否してください。必ず、現地で建物の完成状態を確認すべきです。

現地で行う不具合等の最終確認

現地で行う確認事項は、建物が完成しているかどうかだけではありません。

建物に施工不良がないか、住宅設備が正常に動作するかといったチェック作業が非常に大事です。引き渡し前のタイミングでしっかりチェックして、施工不良などの問題点があれば、売主や建築会社に是正を求める必要があるのです。

また、境界の位置や越境物の有無の確認も行ってください。新築工事の途中で境界杭が埋まってしまったケースや引き抜かれてしまった元に戻されていないケースがあるからです。

そして、指摘して是正してもらった後は、必ず、是正後の再チェック喪行ってください。是正工事などが雑だったり、間違っていたりして、入居後にトラブルになっている人もいるからです。

プロのホームインスペクションの検討

建物に施工不良がないか適切に確認するためには、建築知識と経験、チェックのノウハウが必要です。これがあるかないかで、指摘して補修してもらえたはずの施工ミスがそのまま放置されることになるからです。

引き渡しを受ける前に、プロのホームインスペクション業者に立ち会ってもらい、あなた自身に代わって、もしくは一緒に建物の施工状態を確認してもらうことを考えましょう。既に引渡し済みの人は、入居する前の利用を考えるとよいでしょう。

引き渡し当日の持参物の早めの準備

引き渡し当日の買主の持参物については、前述したとおりです。

注意点は、その準備に早めにとりかかるということです。たとえば、印鑑等を紛失していたら、購入か製作が必要になりますし、遠方の実家などにあるとわかれば、取り寄せが必要となります。引き渡しの前日に用意しようとして気付いても間に合わないですね。

よって、早めに準備にとりかかることで、不足や問題に早めに気付いて、早めに対処するのです。

ここまで、新築住宅の引き渡しに関する基礎知識(そのの意味など)と引き渡し前後や当日の流れ、買主向けの注意点などを解説してきましたが、いかがでしょうか。ここに書いていることは、不動産会社や住宅メーカーから積極的に説明やアドバイスされないことも多いため、初めて知ったことも少なくないでしょう。

引き渡し後に後悔することのないように、しっかり理解し、準備して、引き渡しの当日を迎えてください。

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