引渡し後のタイミングで行う中古住宅のホームインスペクションの注意点

引渡し後に行う中古住宅のホームインスペクションの注意点

中古住宅を購入するとき、売主と売買契約を締結する前にホームインスペクション(住宅診断)を利用する人が多いですが、ときには売買契約前にインスペクションを入れることについて売主から拒否されることがあります。

契約前の実施を拒否されるのであれば、何か建物に関して重大な不具合などの瑕疵といった問題を抱えている可能性を考慮してその物件の購入を中止する人も少なくないですが、購入希望の意思が強くて妥協して契約する人もいます。

その場合、契約してから引渡しまでの間でホームインスペクションを利用することが推奨されますが、そのタイミングでの利用すらも拒否する売主がなかにはいます(引渡し前は売主の所有物であるため断ることはできます)。この時点でかなり心配される建物の状況ですが、契約してしまっているのであれば、引渡し後に実行するしかないですね。

そこで、やむを得ず購入した中古住宅を引渡し後にホームインスペクションするときの注意点をお伝えします。

引渡し後インスペクションの4つの注意点

  • 契約不適合責任(旧 瑕疵担保責任)の有無と期間に注意
  • 契約不適合責任の対象項目に注意
  • ホームインスペクションの実行は引渡し後4日以内がオススメ
  • 家具を入れる前(引越し前)がオススメ

契約不適合責任の有無と期間に注意

契約不適合責任の有無と期間に注意

ホームインスペクションを利用する目的はいろいろありますが、目的の1つは瑕疵があれば売主に補修を求めることがあります。これは大事な目的ですね。この目的のために大事なことの1つが、売主の契約不適合責任です。

売主の契約不適合責任の有無

瑕疵が見つかったときに売主に補修を求めるためには、売買契約において売主に契約不適合責任(以前は瑕疵担保責任と呼ばれていた)が有ると明記しているかどうかは大変重要なことです。売主が契約不適合責任を負うと契約で決められておれば、引渡し後に見つけかった瑕疵について補修を求めることができるからです。

契約内容によっては、売主の契約不適合責任(以前の瑕疵担保責任)が無いとしている取引もありますが、これは買主にとって好ましい条件ではありません。そのような契約内容で購入するのであれば、契約前のホームインスペクション実行は必須条件と考えておいた方がよいです。

ちょっと一言

以前は瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、現在では民法改正により契約不適合責任と呼ばれています。

契約不適合責任の期間

また、売主に契約不適合責任が有る取引であったとしても、その責任を負う期間がどうなっているかも確認して理解しておく必要があります。

不動産会社が売主の中古住宅であれば、引渡しから2年間と長い期間があるはずです(宅地建物取引業法により、2年未満とすることは無効であるため)。しかし、不動産会社以外が売主である中古住宅では、1~3ヵ月の期間とすることが多く、なかには前述したように免責(契約不適合責任なし)とすることもあります。

売買契約書で確認しよう

売主の契約不適合責任の有無やその期間については、売買契約書を見て確認しましょう。まだ、契約前の人なら、不動産会社に「契約不適合責任の条件はどうなっていますか?」などと聞くことも大事です。詳しい説明もされないまま契約して、免責になっていたと後悔している人もいますので注意してください。

契約不適合責任の期間内のタイミングでホームインスペクションを実行

前述したとおり、契約不適合責任の有無と期間は売買契約を締結する前に必ず確認しておき、その期間が経過する前にホームインスペクションを利用して、瑕疵があれば売主へ書面で通知しなければなりません。

期間の経過後に売主に通知しても認められないため、必ず期間の経過前にインスペクションをして、さらに売主へ通知するところまでを実行するのです。このタイミングは大変重要です。契約不適合責任の期間が引渡し日から1カ月と決められているのであれば、引渡し後速やかに実行しなければなりませんね。

契約不適合責任の対象項目に注意

契約不適合責任の対象項目

売主の契約不適合責任があるから、問題があれば何でも売主に対応してもらえるだろうと気軽に考えている人もいますが、どのような瑕疵でもその責任の対象となるわけではありませんので、買主としては注意が必要です。

契約不適合責任の一般的な対象項目

一般的に対象となる項目としては、木部(主要な構造部)の腐食や雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障です。契約によってはこれと異なる内容のケースもあるため、売買契約書できちんと確認しておきましょう。

また、契約書によってはどういった瑕疵が対象であるか不明瞭なものもあります。その場合は、不動産会社に対象となる瑕疵が何であるか書面で示してもらい、売主との契約内容に入れてもらうことでトラブルにあう確率を減らすことができます。

やっぱり契約前のホームインスペクションが安心

契約不適合責任の対象項目を明確に定めていたとしても、買主にとってはこれで万全なわけではありません。対象外の項目において何らかの問題が発見されることも多く、また対象項目に瑕疵が見つかったとしても、それを売主が認めないこともあるからです。

引渡し後のホームインスペクションでは、見つけた不具合などを買主負担で解決せざるを得ないことも多いため、やはり契約前に利用するのがベストタイミングですね。

ちょっと一言

不動産会社に契約前のインスペクションを拒否されたとしても、もう一度、粘って交渉することで承諾を取り付けている方も多いです。拒否されても簡単にあきらめないことも大切です。

ホームインスペクションは引渡し後4日以内がオススメ

インスペクションは引渡し後4日以内に

引渡し後にホームインスペクションを利用する時期、タイミングを検討する上で重要なことを説明します。その重要なことは設備に関することです。

設備の動作チェックは引渡し後7日以内

売買契約の際には、契約不適合責任とは別に設備について取り決めを行うはずです。売買する中古住宅に付帯する設備の内容と故障の有無を書面で売主から買主へ付帯設備票などの書面で通知するのですが、その通知内容では故障していないとなっている設備が故障している場合には、売主へ補修等を求めることができるのです。

但し、これもいつまでも買主が売主に補修等を求められるわけではありません。契約で期間を取り決めるのですが、一般的には引渡し後7日以内に書面で求めることになっています。短い期間ですが、設備は劣化により後から故障する可能性があるため、売主の負担が大きくなりすぎないように7日としているのです。

インスペクションは引渡しから4日以内に利用すべき

契約不適合責任では、引渡し日より1~3ヵ月という期間が多いですが、設備については引渡し後7日しかないわけですから、ホームインスペクションは引渡し日の直後に実施し、問題があればすぐに売主へ通知するスピード感が大事です。

インスペクションの実施後に売主へ通知する日も必要ですし、結果によっては売主へ通知すべきかどうか買主が迷うこともあるでしょう。それだけに引渡し後、できる限り早い日程で利用すべきところですが、遅くとも4日以内で検討しましょう。本来ならば、引渡し日の翌日にでも実行した方がよいです。

そのためにも、引渡し日が確定すれば、早めにインスペクション業者へ問合せして予約しておく必要があります。調査希望日の直前では予約が取れないリスクがあるからです。

家具を入れる前(引越し前)がオススメ

家具を入れる前がオススメ

引渡し後にホームインスペクションを利用する人のなかには、引越しして家具などの荷物を運びこんだ後に依頼する人がいます。これをダメとまでは言いませんが、家具等の荷物が無い方が調査できる範囲が広いため、家具等を入れる前に利用することを強くお勧めします。

大きな家具類に限らず、小さな荷物であっても収納内が一杯になっておれば、確認できる範囲は限られます。契約前で売主が居住しているときであれば、やむを得ないことですが、引渡し後に実施するのであれば、何の荷物もない空き家の状態でホームインスペクションを利用する方がよいでしょう。

ホームインスペクションを入れるタイミングは重要で、本来ならば、売買契約を締結する前がおすすめなのですが、ここではやむを得ず引渡し後に入れる人向けに注意点を解説しました。もう少し詳しくタイミングについて知りたい人は、「住宅診断(ホームインスペクション)のタイミングと利用の流れ」が参考になります。

引渡し後のホームインスペクションのタイミング

  • 契約不適合責任の期間内
  • 引渡し後、家具等を入れる前
  • 引渡し日より4日以内
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。