中古マンションもホームインスペクションすべきか?

中古マンションもホームインスペクションすべきか?

住宅を購入するときには、ホームインスペクション(住宅診断)を利用した方がよいという文化が日本で根付いてきましたが、一戸建て住宅ではなく中古マンションを購入するときにも、ホームインスペクションを利用した方がよいのか相談を受けることがあります。

これから中古マンションを購入しようと考えている人も、利用すべきかどうかで悩んでいるのではないでしょうか。今回のコラムでは、インスペクションに関するマンションと一戸建ての違いについて説明したうえで、中古マンションでもホームインスペクションをすべきかどうか解説します。

ホームインスペクションに関するマンションと一戸建ての違い

ホームインスペクションをする専門家にとっても、一般的に対象物件が一戸建てであるかマンションであるかによって考え方に相違があります。それは、両者におけるインスペクションでの確認可能な範囲があまりに大きいからです。

一戸建てのホームインスペクション

一戸建て住宅の構造で最も多いのは木造です。次に鉄骨造(軽量鉄骨造・重量鉄骨造)です。他にも鉄筋コンクリート造の一戸建てもあります。

木造や鉄骨造の一戸建て住宅では、床下や屋根裏において主要構造部分を直接確認できることが多く、建物の大事な部分における劣化や異常を確認することが可能なことがホームインスペクションを利用する大きなメリットの1つとなっています。

床下や屋根裏を確認できない一戸建て住宅もありますが、その場合であっても外壁・室内壁・天井・床などに出ている症状をチェックしていくことで、構造的な問題を抱えているかどうか、ある程度の推察をすることが可能なこともあります。

これらのことから、一戸建てについては、新築であっても中古であっても専門家にホームインスペクションを依頼するだけの大きな意味があると言えます。

マンションのホームインスペクション

一方でマンションの場合はどうでしょうか。

分譲マンションの多くは鉄筋コンクリート造です。なかには鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄骨造もありますが、圧倒的に鉄筋コンクリート造が多いです。

この鉄筋コンクリート造のマンションにおいて、専有部分(=住戸内)をチェックしても建物の主要構造部分を確認することは基本的にはできません。その理由は以下の通りです。

主要構造部分のことを業界ではスケルトンと呼び、間仕切り壁や内装・設備のことをインフィルと呼びますが、このスケルトンとインフィルは構造的に分離したものです。専有部分のチェックで見ているのは、ほとんどインフィルの部分です。ユニットバスの天井点検口からスケルトンをごく限られた範囲のみ確認できますが、限定的なものです。

もちろん、間仕切り壁・内装・設備などを確認することも大事なことです。一戸建てに対するホームインスペクションほどには構造的なことがわからないという点で違いがあることは理解しておくべきでしょう。

中古マンションでチェックすべきこと

中古マンション購入時にチェックすべきこと

中古マンションを購入する人が契約する前にチェックすべきことには、どのような項目があるか理解しているでしょうか。必要なことをチェックせずに購入すると後悔することもあるので、ここで学んでおきましょう。

購入前にチェックすべき4項目

  1. 管理と修繕計画
  2. マンションが有する性能・特徴
  3. 共用部の劣化状態
  4. 専有部の劣化状態

それでは、この4項目について以下で説明しておきます。

管理と修繕計画

「マンションは管理を買え」とは昔から言われる格言ですが、その通りです。個人的には、管理と立地が大事だと考えています。

ここでいう管理には、共用部分の清掃状況や管理人の対応といったことだけではなく、そのマンションの長期修繕計画に関することも含めています。確認すべきことは多岐にわたっており、以下のような項目が挙げられます。

  • 共用部の清掃状況
  • 管理人の有無・勤務日数と曜日と時間
  • 管理会社への管理委託内容とその費用
  • 理事会・総会の出席率・開催頻度
  • 理事会等の議事録の保管状況
  • 長期修繕計画の内容
  • 積立金の金額
  • 管理組合員の滞納状況

不動産仲介業者に聞いてもわからない項目があるため、仲介業者を介して管理人や管理会社へ問合せる必要もあります。

マンションが有する性能・特徴

マンションの性能や特徴を知らずに購入するのは、少々もったいないことです。性能とは、遮音性能や断熱性能、可変性(リフォームしやすいかどうか)といったことです。特徴とは、立地条件や規模(総戸数など)ですからこちらはある程度は購入判断の際に確認できているのではないでしょうか。

性能について確認するためには、竣工図書を閲覧しなければなりません。この竣工図書は管理人室や管理会社で保管しているので、どこに保管されているか管理人に聞いておくとよいでしょう。

ただ、1つ問題があります。買主が自分で竣工図書を読み解くのは難しいですし、不動産仲介業者にお願いしても対応できない場合が多いでしょう。建築知識が必要ですから、建築士に見てもらう方法が最も適切です。専門家に依頼するとよいでしょう。

共用部の劣化状態

建物の共用部分とは、マンションの外壁や基礎、エントランスや共用廊下などの壁・天井・床などです。規模の大きなマンションとなれば、その全てを確認することは事実上、無理がありますから、ざっくりとでも壁や天井などに大きな亀裂・割れなどの症状が出ていないか見ておくとよいでしょう。

マンション全体をぐるっと一周するぐらいのことはしておきたいですね。

但し、何か気になる症状が見つかったときにそれを判断するには知識と経験が必要ですから、基本的には専門家に診てもらうことを考えるとよいでしょう。

専有部の劣化状態

専有分とは、各住戸のことです。購入を検討している住戸内の劣化状態をチェックするということです。室内に入ってから、床・壁・天井の様子をできるだけ細かく観察することです。ひび割れ・染みなどの有無を見ていき、どの場所にあったかメモしておくとよいでしょう。

専有部分のチェックも共用部分と一緒で適切に判断するためには専門家への依頼が必要なものです。

中古マンションもインスペクションする価値がある

冒頭でマンションをインスペクションしても確認できる範囲が限られると説明しました。それでも専門家にホームインスペクションを依頼する意味があるのでしょうか。

対象範囲が限定的でもやっておく方が好ましい

マンションをインスペクションしても、主要構造部分の状態を見ることができないわけですから、インスペクションの目的が主要構造部分の確認だという人ならば、依頼する意味はあまりないでしょう。しかし、たとえ限定的であってもわかる範囲のことを知っておきたいのであれば、検討する価値は十分にあります。

専有部分の劣化状態、共用部分の表面に現れている症状の部分的な確認、マンションの性能の理解のためにも検討してよいでしょう。

フルリフォーム済み物件ではあまり意味がない

マンションによっては、専門家にホームインスペクションを依頼する意義が小さいケースもあります。それは、室内全体をフルリフォームしている物件です。リフォームによって、新しくなっている部分については、もとの劣化状態を確認することができません。

たとえば、隣との境の壁(=戸境壁)のコンクリートにひび割れがあったとしても、その上に施工している仕上げ材やその下地材で調整して、一時的に問題が隠されていることがあります。リフォーム前であれば、室内の壁に症状が出ていたとしてもリフォームによって、それがわからなくなっていることがあるのです。

部屋全体をリフォームしているようならば、元の劣化状態を確認することができないということになります。但し、リフォーム工事の施工品質をチェックすることはできますので、リフォーム工事のチェック目的ならば検討する価値はあるでしょう。