ホームインスペクションで最も多い指摘事例は断熱材の施工不良や劣化

「ホームインスペクションを依頼すれば、どんなことが指摘されるのか?」とのご質問を頂くことは多いです。

指摘事例は基礎や壁のひび割れ(クラック)、壁や床の傾き・歪み、漏水痕など多岐に渡ります。そういったホームインスペクションによる指摘事例のなかでも最も多いものについてお話します。それは、間違いなく断熱材に関する指摘です。

断熱材の施工ミス(設置不良)や劣化といった問題は、毎週のようにどこかの現場で発見されています(ちなみにアネストでは毎週、全国各地で多くのホームインスペクションが実施されています)。断熱材の施工ミスやひどい劣化は、おそらく今後も解消されることはなく、都度、指摘して補修していくしかないのではないでしょうか。

断熱材の役割は、建物の内部から外部へ、そして逆に外部から内部へ熱が伝わっていく(逃げていく)のを防ぐことです。気密性や断熱性を考慮するうえで重要となるものですね。

夏は外部の厚い空気が室内へ入るのを防ぎ、エアコンの効き目を効率よくします(冷気を外部へ逃げないようにする)。冬は外部の寒い空気が室内へ入るのを防ぎ、エアコンで暖めた空気を外部へ逃げないようにすることができます。エネルギー効率の点でも重要なものです。

最近の分譲マンションではこの断熱性能が高いため、冬でもエアコンを使用しないこともあります。もちろん、地域性や気候、それに個人差もありますが。夏にエアコンを使用しても消費電力を抑える効果が期待できます。

断熱材は快適な空間を保つために大事なものだということがわかりますね。

このように大事な断熱材ですが、その効果を発揮するためには施工品質が大事なチェックポイントとなります。断熱材で建物をすっぽり覆ってしまうイメージで施工するのですが、隙間があるとそこから熱が出入りしてしまうため、施工品質が大事になるのです。

小屋裏の断熱材

上の写真は、新築住宅のホームインスペクションで小屋裏を調査したときもので、天井板の上に断熱材が設置されています。薄いピンクのビニールが断熱材ですが、隙間があります。このわずかな隙間からでも熱が逃げてしまうのです。

外壁の断熱材

上の写真は外壁の内部ですが、こちらは隙間どころか断熱材が抜けています。ただ、外壁面の断熱材は中古住宅や完成済みの新築住宅ではほぼ確認できないのが難点です。

次に床下の写真です。

床下の断熱材(グラスウール)

これは中古住宅の床下の様子です。黄色いものが垂れ下がっていますが、断熱材が劣化したからか床面から剥がれ落ちたている状況です。本来ならば、床面の裏側に付いていなければなりません。

断熱材の問題は中古住宅に限らず新築住宅でも本当に多く見つかります。下記は新築住宅のホームインスペクションの際に床下で見つかった施工不良の事例です。

発砲系の断熱材

白い板状のものが断熱材なのですが、下に落ちてしまっていますね。ちなみに断熱材にはふわふわしたようにグラスウール製のものや発砲系(発砲スチロールのようなもの)など、いくつか種類があります。この白いものは発砲系の断熱材です。

前述したように、完成物件では外壁面の断熱材の確認は難しいですが、床下や屋根裏は点検口から確認できますので、住宅購入前や引渡し前には必ず確認しておきましょう。

執筆者:荒井康矩(ホームインスペクションのアネスト