新築住宅の構造体・構造金物の立会い検査(インスペクション項目と注意点)

新築住宅の構造体・構造金物の立会い検査(インスペクション項目と注意点)

新築住宅の建築中に検査(インスペクション)すべき工程について、その検査項目と注意点を解説するシリーズの2回目です。今回ご紹介する工程は、構造躯体と構造金物の設置後です。ちなみに、木造軸組工法(在来工法)を対象として解説しております。

構造躯体および構造金物のインスペクション対象範囲と工事の順序

ここでご紹介する構造躯体および構造金物のインスペクションは、土台から上の部分が対象です。基礎コンクリートを打設後、型枠が撤去され、基礎の上に土台が敷設されていきますが、それ以降の工程です。

土台を設置した後は、床張り、柱、梁、屋根へと工事が進んでいきます。棟上げという言葉を聞いたことはあると思いますが、これは屋根の棟木まで施工するときのことを言います。棟木とは、屋根の一番上の部分で水平方向に取り付ける部材のことです。

以降では、土台から順番にインスペクション項目を挙げていきます。

土台のインスペクション

土台のインスペクションとは言っても、土台以外に大引きも一緒に確認することを前提としています。これら木材とプレカット図を照合するところも検査に含めます。木材には工場で刻印された記号があるはずですから、これとプレカット図を見比べるのです。

土台のインスペクション

また、使用されている木材そのものに大きな欠損がないかもチェックします。本来の強度を大きく低下させるような土台などがあれば、補強や交換などの対応を検討する必要があります。

この工程のインスペクションで確認される指摘としては、以下のようなことがあります。

  • 土台が基礎の上に設置されずに基礎の外側へずれている
  • アンカーボルトが土台の芯から大きくずれている
  • アンカーボルトがそもそも土台からずれている
  • ボルト設置のために現場で追加開口した穴が既存の穴と重なってしまいボルトが適正に効いていない
  • 図面通りの位置にアンカーボルトがない
  • 土台や大引きが大きな欠損がある

土台に関する主なインスペクション項目を並べると以下の通りです。

  • 現場とプレカット図の照合
  • 土台と基礎の取り合い
  • 土台継手とナットのかかり方、締付け力
  • 土台の仕口や継手の位置
  • 接合方法と状態
  • ホールダウン金物・アンカーボルトの状態
  • 防腐・防蟻処理

床組みのインスペクション

床組みとは、大引き・根太・火打梁・束・合板で構成される部分です。床組みには、根太を用いてその上に合板を施工している工法と根太を用いない剛床による工法があります。まずは、いずれの工法であるか確認しましょう。

床組みのインスペクションで確認される指摘としては、以下のようなことがあります。

  • 束が仕様通りに設置されていない
  • 束が固定されておらずぐらつく
  • 床合板の釘の位置がバラバラになっている
  • 火打ち梁が図面通りに設置されていない
  • 合板が大雨で濡れて乾燥しない
  • 合板が濡れた後に変形している

床組みに関する主なインスペクション項目は以下の通りです。

  • 各部材の設置位置
  • 束の取付け状態
  • 仕口や継手の位置
  • 接合方法・状態
  • 金物の取付け状態
  • 合板の釘ピッチ
  • 合板の状態
  • 防腐・防蟻処理

柱・梁・筋交い等のインスペクション

柱や筋交い、そして梁などの横架材のインスペクションについてです。この工程の検査は、棟上げを終えた後の構造金物を取り付けた後に行うことが一般的です。

主要構造部のインスペクション

通柱、管柱、間柱の位置や傾き、梁などの横架材の位置、これらの接合部分の金物の使用有無・取り付け状態、土台との接合部分の状態など、重要な確認項目がたくさんあります。この工程は、瑕疵保険などの検査でもチェックするのですが、短時間で部分的に確認するのみであり、買主側の第三者として住宅検査に入ると瑕疵保険等の検査の指摘漏れがたくさん見つかることがあります。

重要な工程ですから入念に見ておきたいところです。

上棟後のインスペクションで確認される指摘としては、以下のようなことがあります。

  • 筋交いが図面通りに設置されていない(設置位置の誤りや抜け)
  • 使用する金物の間違い
  • 部材の大きな欠損
  • 柱の歪み

この工程でもいろいろな指摘が出ることがありますが、意外と部材の欠損は多いです。欠損にも、現場に搬入された時点で欠損があったであろうものと、現場作業により欠損を生じさせたものがあります。今は工場で生産した材料を現場で組み立てるだけだから、そんなに問題が生じないと誤解している人が多いですが、そうではありません。

現場で生じさせる欠損とは、例えば、ある部材の設置位置を間違ってしまい正しい場所へ設置しなおすときに、間違って取り付けた箇所から取り外す作業で出来たものなどがあります。工場で生産しても、現場は人が作業しますから、ミスが起こることはどの現場でもありうることです。

柱・梁・筋交い等に関する主なインスペクション項目は以下の通りです。

  • 各柱の位置・設置状態・傾き
  • 梁などの横架材の位置・設置状態
  • 筋交いの位置・設置状態
  • 耐力上有効な面材の位置・設置状態・釘のピッチ
  • 柱と土台の接合状態
  • 柱と梁の接合状態
  • 小屋組みの各部材の設置状態
  • 野地板の設置状態
  • 金物の設置状態
  • 各部材の欠損
  • 防腐措・防蟻措置

土台、柱、筋交い、梁、構造金物などをチェックできるタイミングでの検査(ホームインスペクション)は、工事が進むと確認できる範囲がどんどん限られていくため、タイミングをよく確認して実施しておきたいものです。

執筆者

アネスト
アネスト執筆担当
住宅購入や新築、リフォーム時のホームインスペクション(住宅診断)を行うアネストが執筆、監修している。
アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。

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