既存住宅状況調査技術者とホームインスペクション

既存住宅状況調査技術者とホームインスペクション

ホームインスペクションに関連する資格としては、いくつもの資格がありますが、そのなかでも今、最も注目を浴びており、今後、重要性が増すものとして既存住宅状況調査技術者があります。

感じが並んでいて読みづらいですね、、

これに似た名称のもので、既存住宅現況検査技術者というものもあります。

今回のコラムでは、注目度が増している既存住宅状況調査技術者について解説しており、これとホームインスペクションの関係についても解説します。

ホームインスペクション(住宅診断)の利用を検討する人から、「どんな資格があるのですか?」と質問を受けることがよくあるため、ここで関連する資格について解説することで、インスペクションの利用に役立てることを目的としています。

既存住宅状況調査技術者とは

はじめに既存住宅状況調査技術者について紹介します。この資格がどういうものであるか、またどのような業務をすることができるのか等についての説明です。

既存住宅状況調査技術者とは何か

既存住宅状況調査技術者とは、国土交通省に登録された講習機関による講習を修了した建築士のことを言います。

ここで大事なポイントは、建築士であることです。一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれでも構いませんが、建築士の資格を保有していなければ、既存住宅状況調査技術者の講習を受講することもできません。

これまでのホームインスペクション関連の資格では、建築士であることを最低条件としていたケースは少なく、建築知識の裏付けがないまま、簡単な試験のみで資格を付与しているケースが見られていましたが、これからは他の関連資格のことは無視して、既存住宅状況調査技術者を持っている者であるかどうかが大事なチェックポイントとなります。

既存住宅状況調査技術者の講習実施機関

国土交通省に登録された講習機関による講習を受ける必要があると書きましたが、この講習を実施できる機関は限定されており、現時点(2017年11月現在)では国土交通省のウェブサイトにおいて、この講習を行う機関として、以下が掲載されています。

  • 住宅瑕疵担保責任保険協会
  • 日本建築士会連合会
  • 全日本ハウスインスペクター協会
  • 日本木造住宅産業協会
  • 日本建築士事務所協会連合会

既存住宅状況調査技術者は、これらの団体が実施する講習を受けて修了した建築士ということです。

既存住宅状況調査技術者になるためには建築士の資格を有しておれば、建築士事務所の登録をしていなくても問題はありません。しかし、後述する既存住宅状況調査という業務を実際に行うためには建築士事務所の登録が必要です。

既存住宅状況調査技術者ができること

それでは、この既存住宅状況調査技術者の講習を修了したものには、どういった業務ができるのでしょうか。その業務の一例は以下の通りです。

  • 平成28年に改正された宅地建物取引業法でいう建物状況調査
  • 既存住宅売買瑕疵保険の加入に必要な検査
  • 長期優良住宅化リフォーム推進事業で必要とされるインスペクション

これらの建物調査(インスペクションともいう)に活用することができますが、講習で学んだことはこれらに該当しない住宅診断(ホームインスペクション)にも活かすことができます。

たとえば、住宅購入判断の1つとして利用するときや、リフォーム工事前の現況を確認するための調査、自宅の状況を把握するための調査などです。

既存住宅現況検査技術者との違い

既存住宅状況調査技術者に非常によく似た名称のものに、既存住宅現況検査技術者というものがあることを知っていますか?

  • 既存住宅状況調査技術者
  • 既存住宅現況検査技術者

この2つを並べて見るとわかりますが、わずかに名称が異なるだけなので混同されがちなのですが、別ものです(赤字部分が異なる)。

既存住宅状況調査技術者は、平成28年に改正された宅地建物取引業法でいう建物状況調査に対応するものとして創設されたものですが、既存住宅現況検査技術者はそれ以前に創設されていたものです。

既存住宅現況検査技術者の方は、建築士の資格を持っていなくても講習を受けることができたという点で大きな違いがあります。これは非常に大きな違いです。

事実、建築士の資格を持たないものが検査したケースでは、建築関連の知識不足により判断ミスを起こしやすいという問題が指摘されていたのです。さすがに試験対策をして合格しただけの営業マンや多少、建築経験がある程度の人がホームインスペクションしていることには、抵抗を感じる人は多いでしょう。

平成28年に改正された宅地建物取引業法でいう建物状況調査を行うには、最低でも建築士の資格が必要だと考え、受講条件を変更して新たな資格を設けたわけです。

もちろん、既存住宅現況検査技術者でも建築士の資格を持っている人は多くおりますが、これに該当する人の多くは既存住宅状況調査技術者の講習も受けて移行していっています。移行講習も積極的に広報されておりますので、多くの人が移行しているようです。

よって、これからホームインスペクションを利用する人は、既存住宅状況調査技術者であることを確認できれば、自動的に建築士であることも確認できますから、これを確認するとよいでしょう。

宅地建物取引業法でいう建物状況調査に対応

ここまでに記述している平成28年に改正された宅地建物取引業法について触れておきます。

この改正によって、不動産会社は中古住宅の売買に際して、買主や売主に対して、建物状況調査(=ホームインスペクション)のことを説明して利用有無を確認しなければならなくなりました。これは、必須事項として義務付けられたもので、重要事項説明のなかで説明されます(重要事項説明書にも記載されます)。

これが施行されるのは平成30年(2018年)4月1日からですが、その日が来る前から既に売主や買主へ説明を始めている不動産会社もあります。

これからの中古住宅の売買市場においては、既存住宅状況調査技術者が欠かせない存在となっていくのです。

既存住宅状況調査方法基準

中古住宅のホームインスペクションを行うに際しては、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に従って行うことになります。これが、中古住宅の売買の際に重要事項説明で説明される既存住宅の建物状況調査であり、これからの中古住宅のインスペクションにおける最低基準となっていくでしょう。

ここで間違ってはいけないのは、これは最低限度の基準ですから、この既存住宅状況調査方法基準で定めている以上のインスペクションをすることもできるということです。これについては、ホームインスペクション会社によって差異がありますから、依頼する人はどういった調査をしてくれるのか、ホームページ等でよく確認するとよいでしょう。

新築建売のホームインスペクション

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ホームインスペクション(住宅診断)とは

ホームインスペクションの様子

ホームインスペクション(住宅診断)という言葉と建物状況調査という言葉が出てきてややこしいと感じる人は多いでしょう。そこで、この点について補足説明しておきます。

平成28年に改正された宅地建物取引業法では、「建物状況調査」という言葉を使っていますが、既存住宅の建物状況調査とは、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に従って行われるものです。

ホームインスペクションは、この建物状況調査も含まれますが、その他の住宅に対する建物調査までも含まれて使用されることがよくあります。最近までは建物状況調査という言葉が使われていなかったのに対して、ホームインスペクションや住宅診断という言葉はもっと以前から利用されていましたから、より広義の意味で利用されやすいのです。

会社や人にとって、ホームインスペクションという言葉の使い方に差が出ていますが、基本的には広い意味で利用されており、既存住宅の建物状況調査はその一種であると考えておいた方がよいでしょう。

ホームインスペクションについては、「ホームインスペクションとは?」により詳しいことが記載されているので、参考にしてください。

ホームインスペクションは既存住宅状況調査技術者に依頼すべき

平成20年頃からホームインスペクションが普及してくるに従い、いろいろな組織・団体が関連資格を作り運用してきました。すでにほとんど活動していない団体もありますが。

乱立していてわかりづらいうえに、よい講習や研修が実施されていないことが多くて、さらにそれぞれにばらつきがあったのですが、これからは既存住宅状況調査技術者が中心となっていくことで消費者にも不動産業界関係者にもわかりやすくなっていくと予想されます。

もう他の資格のことを考えたり、比べたりする必要もなくなります。

既存住宅現況検査技術者である建築士で、まだ既存住宅状況調査技術者に移行していないものでもよいですが。

他の資格のことは気にせず、既存住宅状況調査技術者であることがホームインスペクションを依頼するときの判断基準の1つとなります。もちろん、これだけでは不十分であり、経験が必要なのは言うまでもありません。

ちなみに、中古住宅のホームインスペクションを利用するならば、既存住宅状況調査技術者で決まりだと言えますが、新築住宅においてはそうとも言えません。これは、あくまで中古住宅向けのものだからです。

よって、新築のホームインスペクションを利用する際は、建築士の資格が最低ラインだと考えるとよいでしょう。

アネストのホームインスペクション

全国で第三者の一級建築士がホームインスペクション(住宅診断)を行うアネスト。新築・中古住宅の購入時やメンテナンス時などに建物の施工ミスや劣化事象の有無を調査することができる。